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三河島 駅列車衝突事故 特別監査報告書 全文

資料として、三河島事故に対する特別監査報告書の内容全文をここにアップします。

国鉄監査報告書昭和36年版 p277~P288から引用しています。今回の三河島事故では、最初の衝突後、十分列車防護をする時間が有ったにも関わらず、当事者(貨物列車乗務員、及び下り電車乗務員)が適切な防護措置を取らなかったこと、(本来であれば、支障した時点で前後の列車に対し、発煙筒・信号短絡等の措置を取ることが義務づけられている。)さらに、乗客がドアコックを開放して線路に降り立ったこと等の複合的な要因が重なり、支障した下り電車が対向の電車と接触大破して、上り電車乗務員が死亡乗客の多くも犠牲になった事故で、運転士・機関士の列車防護措置に対する怠慢が指摘されたほか、組織として支社が十分機能せずに管理局にしわ寄せが来ていること。更に管理局も現場への管理が形式的文書的な指導になりがちで、現場が十分に実務指導等を行える状況になっていないことなども指摘されており、東京鉄道管理局の三分割に繋がる、組織の改編などにも言及されています。

 

常磐線三河島 駅列車衝突事故特別監査報告書提出について

(写)

     監委事第 20 号   
昭和 37 年 6 月 14 日

運 輸 大 臣
  斎 藤 昇 殿

日本国有鉄道監査委員会委員長

石 田 礼 助 

常磐線三河島駅列車衝突事故特別 監査報告書提 出 に つ い て (報告)


鉄保第123号の御指示に基づい て、常磐線三河島駅列車衝突事故に関し、調査検討した結果を別冊のと おりとりまとめましたので御報告いたします。


常磐線三河島駅列車衝突事故特別監査報告書

昭和37年5 月4日付で、常磐線三河島駅列車衝突事故 に関し、運輸大臣より事故の原因を究明するとともに、特に国鉄の管理体制のあり方について、 特別監査を行なうよう御指示がありましたので、 監査委員会において、昭和37年5月7日以降17 回にわたり委員会を開催し、審議いたしました。 

 事故の状況は、後に述べるとおりでありますが、本委員会は直接の原因のみならず、事故防止の観点から、広く間接的な諸原因について究明する事が重要であると考え、国鉄補本社役員、局長、関東支社長、東京鉄道管理局長及び現場長等について、状況、意見を聴取するとともに、本件に関し、国鉄の実情を詳細に調査検討いたしました。 
 さらに、労働組合役員からも参考意見を聴取するとともに、有識者の意見、新聞論評等も広く参考といたしました。
 以上の結果により、次のとおり所見を申し述べます。

1 事故の概況と原因

1 事故の概況

(1)事故の種別

        列車衝突

(2)発生場所

        常磐線 三河島駅構内

  (3) 発生日時

        昭和37年5月3日 21時37分 天候 くもり

   (4) 事故の概要

  下り第287貨物列車は、田端操車場駅を定時に発車したが、三河島駅では、4分遅れの下り第 2117H電車を平常の順序どおり先行させるために、同貨物列車に対して停止の措置をとっていた。
しかし、同貨物列車は停止することなく、出発信号機の停止信号を越えて安全側線に突入し、機関車及び続く貨車1両が脱線し、下り本線を支障した。
たまたま、三河島駅を4分遅れで出発した前記の下り第2117H電車がこれに接触し、上り本線を支障した。このとき、この電車の多くの乗客が上り線側に下車して歩行を開始した 。
おりから、三河島駅に2分遅れて到着する予定で進行してきた第2000H電車が、前記の下り第2117H電車に接触し、前から4両目までが脱線大破し、うち2両目と3両目が築堤下に転落した。な おこ のとき、下り第2117H電車の前から2両 目までが大破した。

 


このため、電車の乗客など多数が死傷し た 。


( 5 ) 死傷状況 (昭和 37 年 6 月 1 3 日 現在)

2 事 故 の 原 因

事故の直接原因については、細部に不明な点もあるが、国鉄の調査に基づいて検討した結果、次のごとく推定される。

(1)事故の直接の原因は、下り第287貨物列車の機関車乗務員が三河島駅の出発信号機の停止信号を確認せず、そのため列車が安全側線に突入脱線したことによる 。
    この事故の結果を悲惨なものとした原因は、第1の衝突により、下り第2117H電車が上り本線を支障したが、約6分後進入してきた上り第2000H電車に対して、防護処置をなすべき関係乗務員および関係駅職員の行動に遺憾の点があったためと思われる 。
また、乗客の誘導が適切であったならば、被害を少なくなし得たものと思われる。
(2)安全側線に突入し脱線した下り第287貨物列車に、下り第2117H電車が衝突し脱線したことは、時間的にみてこれを避けることはできなかったものと認められる。
(3)事故関係職員の最近一週間の勤務状態からみて、過労、休養不足等があつたとは認められない。
(4)車内警報装置は、関係電車には設置されていたが、下り第287貨物列車の蒸気機関車に は設置されていなかった。また安全側線および信号機等の保安装置についての異状は認めら れない 。
(5) これを要するに、相当長い職務経験のある者が信号を冒進し、防護処置をなすべき職員が相当数おり、時間的にも余裕があったと思われるにもかかわらず、誰一人として所要の防護処置をしなかったことは、尊い人命財産をあずかるこれらの職員に精神の弛緩と周到な訓練の不足があったと判断せざるを得ない。

 3 管理体制のあり方

昭和36年の年末から発生した一連の事故と今回の事故の様相をあわせ考えると、指導、訓練、人事管理、運転考査、保安に関する設備、現場管理等管理体制のあり方について問題があると思われるので、これらの点につき将来の事故防止の立場から検討を加えた。以下具体的にこれを述べ る。

1 指導、訓練の徹底

(1) 指導、訓練について調査した結果によれば、相当な努力が払われてはいるが、計画の樹立、報告のまとめなどに偏し、書面管理、机上管理に陥 りがちであったと認められ、その実施の内容についても、講習会、研究会等指導面に重点がおかれ、実践的な訓練に欠けていたきらいがある。
指導、訓諌が十分 に 行 な わ れ な かった一つの大きな原因として、労働組合との関連につ いて考えざるを得ない。事故防止に必要な考査、訓練、審査、表彰、競技会等が数次にわたる拒否闘争の結果、順次廃止あるいは簡略化されてきた。近年になって一部は復活したが、相当後退したものと認められる。
(2) 経営者として、労働組合の拒否闘争等におされて、安全確保のための訓練、考査等について後退したことは、一般社会情勢からみてやむを得ない点があったとはいえ、はなはだ遺憾である 。
貴重な生命財産に対し重大な責任を負う輸送について、安全を確保することは、国鉄の使命であり、また全職員の最高の責務である。現場における指揮命令権を確立して、すみやかに訓練、考査等の徹底を期すべ きである。
また、労働組合としても、これらについて積極的に協力することが、社会的義務であるとの自覚を持つことを強く要望する。
(3) 訓練は実践であり経験であって、その実践の反復により、習性の域に達して初めて有効な訓練となるものであるが、このような訓練に欠ける面も見受けられるので、最も有効で実践的な訓練を強力に実施すべきある。特に、異常事態発生時において、列車防護、乗客の誘導等反射的に的確 な 行動がとれるよう実際に即した訓練を積み重ねることが必要である。
訓練の 結果を常に測定することは、実情は握と次の訓練計画をたてるために必要であり、その方法としては、運転関係従事員が所定の動作をとっているかどうかを随時に審査する実行力監査を、現実的な方法で行なうことが有効であると認められる。
さらに、指導、訓練の実施にあたっては、人間の機能を考慮に入れた、いわゆる人間工学的研究を十分に取り入れるべきである。なお、指導、訓練方法としては、視聴覚的教育等近代的な手法を推進する必要がある。
(4) 列車または車両の運転については、運転取扱心得によって安全の確保を図っているが、さらに、人命尊重の精神の徹底を期し、この精神を具現するための取扱方を具体的に取 り入れるとともに、現行運転取扱心得の画一主義を改め、線区の実情に応じ、実際に即した取扱いができるものとするよう検討すべきである。
現場においては、運転取扱心得に基づいて作られた作業内規により、各職の作業を細かに規定し、これを実行させることにより正確な作業をさせ、適切な処置をとらすことになっているが、作業内規に不十分な点も見受けられるので、これを内規の目的に合致するよう、常に検討し、具体的、実際的なものとすべきである。さらに、これを確実に実行させるため、常に指導、訓練を怠らないことが必要である。
(5) 現場指導 については、現場管理者に次の点を確実に実行させることが必要である。
イ 責任の重い職務に従事している部下職員に対しては、その責務の重大さを自覚せしめ、厳正な場職規律を保持するよう努力するとともに、き然たる態度で指導、訓練等を行ない、規程の厳守を励行せしめるべきである 。
ロわずかの肉体的、精神的な動揺が大きな結果を招来するおそれもあるので、現場管理者は常に良い人間関係樹立するよう心がけ、従事員が自主的に生活規律を正すよう指導する必要がある。

2 人事管理の強化

(1) 従来、 国鉄では、運転に関係する従事員の身体および精神機能の適格性を確認し、運転の安全を確保するために運転考査を行なっている。
イ 運転考査は昭和25年より、一定期間ごとに行なう年次考査として開始され、昭和29年まで継続して実施されていた。
しかしながら、昭和30年以降、精神機能の年次考査は、一時中断の状態となり、その間にお いては、わずかに登用、昇職等に際してのみ、臨時考査が行なわれていたにすぎなかったが、昭和35年11月から再び年次考査が実施されることとなった。
運転考査中断以前において、考査結果の要注者には特別の指導を行なう等の措置を講じていたが、これらのものの責任事故の発生率は、一般のものに比べて相当高くなっている。
このことは、運転の安全を確保するためには.身体および精神機能の適格性を確認することが必要であることを示している。
このような年次考査が、かなりの期間にわたって中断されたことは誠に遺憾である。
ロ 運転考査は、身体および、精神機能の両面にわたり、万難を排して継続的に実施すべきである。
今後、考査の実施にあたっては、新規採用時の考査も含め、適格水準を高めるよう検討し、不適格者を運転業務からはずし、従事員の質的向上を図るとともに、考査結果を作業管理の面に十分活用すべきである。
また、考査の方法については、従来より種々改善されているが、今後心理学および精神医学の分野を総合して工夫を加え、さらに作業実態等に即応して、より適切なものとするよう、常に研究を進める必要がある。
(2) 現場における人事管理の現状をみると、現場管理者の部下職員に対する個人は握が十分 には行なわれていないところが見受けられる。
また、鉄道管理局およびその補助機構である駐在運輸長は、その業務執行の現状からみて、現場管理者に対するゆきとど い た 指導と実情のは握に欠けているところもあり、血の通った人事管理が十分とはいえないうらみがある。
現場に対する人事管理は個人個人の性格、手腕、実行力、意欲等を確実には握し、適材を適所に運用することが最も重要であるので、今後特に、個人は握に努めるべきである。
(3) 運転に関係する従事員に対しては、特に、国鉄輸送の責任の重大さにかんがみ、作業上不適性な者、注意を要する者については、すみやかに配置転換を行なうべきである。このことは本人に対しても適切な処置であると考えられる。
また、同 一職種に長い期間勤務することによって向上心を失い、作業が惰性に陥る場合も考えられるので、意欲をもって業務を遂行できるような条件を与え、不測の事故を起させないようにすることが必要である。
(4) 責任を自覚し、その努力を惜しまず業務を遂行している実績には、個々おのずから差のあるもので、これらに対しては、なんらかの方法で報いることが必要である 。
また、従来のような期末手当のー率支給の方法は、早急に改められるべきである。

3 保安に 関 す る 設備 の 改 善 

(1) 車内警報装置については、昭和31年参宮線事故を契機とし、重要な線区に対して、車両、線区に応じた3種類の形式のものを設置することとしたが、そのうち東京、大阪における通勤電車用のものと、東海道線用のものは、技術上の問題が解決されその設置は促進された。しかしながら、蒸気機関車、電気機関車、気動車等各種の動力車が混用されている線区に使用する形式のものについては、動作の不安定等技術的に解明すべ き問題が多く、さらに、列車自動停止装置をあわせ研究することとなった等の事情もあって、その普及が遅れるにいたった。
このような経過のため、常磐線においては、車内警報装置は、通勤電車には設置されていたが、貨物列車の蒸気機関車には、いまだ取り付けられるにいたっていなかった。
今回のごとき事故を防止するには、列車自動停止装置を設置することが最も有効適切な方法であるが、当面の対策として、列車自動停止を前提とした車内警報装置をすみやかに設置すべ きである。この際、採用すべき車内警報装置は、過去の経験にかんがみ、技術的に十分安定し、標準化されたものとするよう関係各部門の努力を強く要望する。
(2) 安全側線は、停車場内で列車または車両が、停止手配をとったにもかかわらず行き過ぎて停止した際、衝突等の事故の起こるのを防止するために設けられたものであり、したが っ て今回の事故のごとし信号を確認せず冒進した場合においては、安全側線のみによって安全確保を期することは困難であると判断される。しかしなお、今回の事故にかんがみ、配線、構造および列車の取扱いについて再検討し、その安全度の向上に努めるとともに、特に、併発事故防止についてその対策を講ずる必要がある。
(3) 対 向 列 車 の 防護方法 に つ い て 、 複線、 電 車 区 間 等 の 列車密度 の 高 い線 区 に対 しては、列車の停止手配をすみやかに行なう方法等について検討すべきである。
また事故の際、乗客を適切に誘導するための設備としても、車内放送装置を早急に整備すべ きである。
(4) 昭和36年度から始った国鉄新5箇年計画は2年目に入ったに過ぎないが、国の経済発展に応じきれない事実も認められると同時に、運転保安設備、踏切保安設備、線路設備、防災設備等の安全確保のための根本的対策を打ちだすべき時期と考えられるが、国鉄は輸送要請の充足と安全確保とを使命としているので、新5箇年計画について、輸送の限界をも考慮に入れた総合的視野からの再検討が望ましい。

4 現場管理体制 の 確立

( 1 ) 国鉄の管理組織は、本社、支社、鉄道管理局および現場駅区の4段階制を主軸としている。
客貨輸送の量、質両面にわたる飛躍的増大により、管理局の業務がしだいに複雑、多岐にわたらざるを得なくなり、さらに、支社の体制に不十分な点があるために、管理局の業務のうち、計画的業務の比重が大となっている。
その結果、ややもすれば現場管理が書面管理の弊に陥いり現場に密着した管理が不十分となり、また同時にゆきとどいた人事管理が困難になったものと認められる。
このような事情により、東京鉄道管理局のような業務量の膨大な管理局においては、現場管理者は、局幹部との接触の機会が少なくなり、ある意味での孤立状態となり、かつ複雑な事務処理報告等を負担させられる結果、部下職員の指導、訓練、監督等の本来の業務に専心することが困難となっている部面も見受けられる。
管理局に現場管理の補助機構として、現場の指導監督を行なうため、駐在運輸長、施設監査員等の制度があり、現場指導については、相当の努力が払われたことは認められるが、その機能を十分に果しているとは認めがたい。
(2) 国 鉄 は現場執行業務の重要性を深く認識し、現場に密着した管理を行なうことができるよう、支社、管理局、現場聞の管理体制のあり方について検討を加え、すみやかに改善の処置をとるよう強く要望する。
さらに、東京鉄道管理局のごとき業務量の膨大な管理局については、その特殊性を考慮し組織について検討すべきである。
(3) 国鉄の使命よりして、本社は常に輸送増に対する社会的要請と安全確保の至高の使命と の総合的視野にたった判断と施策を十分に行なう必要がある。
国鉄のような膨大な企業においては、幹部は、内に処理すべ き 問題が非常に多いのに加え、 対外関係の折衝も多く、きわめて多忙であるので、トップ・マネージメントの運用、本社事務処理機構および本社、支社間の管理体制のあり方等について検討を加え、要すれば、トップ・マネージメントの強化等について検討すべきである。
(4) 将 来 の 事 故 防 止 の 強化対策 と し て は、 従事員 の 指導、 訓 練 の 強 化 と 保安設備の増強とが両者あいまって初めてその達成が期待できるものであって.一方を重視し、他方を軽視する等の考え方は戒るべきである。
人件費の膨脹 は、経営上大きな問題であり、技術革新と設備の近代化による要員の合理化は、今後とも積極的に推進されなければならないが、設備投資、輸送の実態、安全確保の問題、従事員の訓練程度等の諸般の要因を十分比較検討し、総合的判断により均衡のとれた施策とする必要がある 。
(5) 国鉄の事故には、直接結果の現われるにいたらないものがあるが、こ の種事故の発見に努め、これらのよってきたる素因を科学的に検討して、その結果を指導、訓諌および保安設備の強化等に反映させ、事故の防止に努めるべきである。
(6) 今回の事故は運転取扱上の誤りに起因した惨事であるが、鉄道輸送には、このほかに踏切、線路、災害等大事故の素因をなすものがあり、かつ、これらの事故防止の大部分は、従事員の警備など人力に依存している場合が多いのであるから、これらの事故防止についても同様に、この際、根本的な検討を重ね適切な対策をたて措置する必要がある 。


む す び

国鉄は、現在年間旅客約53億人、貨物約2億トンの 膨大な輸 送を限らた輸送施設で最も能率的に、長大編成、高密 度、高速度をもっ て行なっている 。
この輸送量は 将来ともますます増大の傾向にあり、しかもその輸送を最も安全に実施しなければならないのであって、国鉄の責務たるや誠に重大である。
よって、国鉄は打って一丸となり、人命尊重の精神に徹し、今回のような事故を今後絶対に起さない決意をもって、管理体制を強化し、平素の指導、訓練はもちろん、保安設備その他諸般の施策に万全を期し、その遂行に遺憾のないよう努力すべ きである 。
このことが事故防止対策の根本であり、同時に国鉄管理者の最大の義務であり、また、この際における正しい責任のとり方であると信ずる 。



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