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65-衆-社会労働委員会-8号 昭和46年3月2日 議事録抜粋

 

国鉄社旗

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○川俣委員 私は日本国有鉄道の累積赤字がどんどんふえていくということに対して、きょう総裁もお見えになっておりますし、今後どのようにするべきだろうかということを非常に関心を持っている議員の一人でございまして、ただ国鉄は明治三、四年ですか、時の民部、大蔵省の鉄道係、こういう世帯から始まって、いまや大国鉄、日本国有鉄道、そうして大総裁、優秀な人材が総裁の席にすわるという世の中になりました。そこで、幾多組織的に変遷して今日にきておりますが、問題は終戦後の昭和二十四、五年ごろですか、いまの日本国有鉄道という、運輸省から切り離されて、ひとりでどんどん走るということになってきたわけでございます。
 そこで、大国鉄になっただけに、国会に席を占める国鉄御出身の議員諸公も多数おられるわけですが、佐藤総理からおられるわけですが、私は国鉄の内部のことはむしろ一切白紙でございまして、これから、ただ赤字をどのように解消していくべきか、そうして労使関係の協調の上に立ってこれに取っ組んでおるかということを、後日あるいは後刻、同僚議員なり先輩議員から具体的な事例を出す前に、私は私なりに、幼稚な質問に入るかもしれませんが少し質問してみたいと思います。
 そこで、まず、総裁はいまの赤字対策というものをどのように考えて、赤字対策の実が実っておるのか、むしろ私たちが見るところによると、やり方がまずいのかあせりなのか、赤字対策に取り組む姿勢が、あっちにぶつかりこっちにぶつかり、ついには労使関係が多大な険悪な結果になって、何ら赤字対策という実が実ってないじゃないかということを、私のひとり合点の心配であればけっこうなことですが、総裁はそれに対してどのように考えておられるか、一応まずお聞かせ願いたい。

磯崎説明員 

ただいま先生のお話のとおり、実はことしでちょうど国鉄は百年でございます。百年たっておりますので、いろいろな意味のあかがたまっておりますし、また新幹線その他で前向きに進んでいこうという気持ちも持っております。
 いまお話しの異積赤字四千数百億ございますが、今後これの解消、あるいは解消していかないまでも減らすことにつきましてはいろいろ苦心しております。政府にもいろいろ御協力願っておるわけでございますが、問題は二点大きな問題点があると思います。
 一つは、やはり百年たった交通機関が、いろいろ飛行機や自動車や船、そういうほかの交通機関と完全な競争にさらされているということでありす。いままでの陸上交通を独占しておった戦前の姿と、国鉄を取り巻く環境が全く変わってきたということが一つの問題点であると思います。
 これにつきましてはいろいろ議論がございまして、どういうふうにすべきかという議論がございますが、やはり私といたしましては、もう鉄道というものの守備範囲をある程度縮めていく、そうして二十一世紀に残り得るようなものだけ残していく。もっと具体的に申しますれば、ほかの交通機関にたよれるものはどんどんほかの交通機関にかえていく、そうして日本全体の幹線の輸送、それから将来の新幹線、こういうものを中心として二十一世紀に向かって国鉄は進むべきじゃないか、これをまず第一に考えております。しかしこれにはいろいろ問題がございます。過疎対策の問題あるいは日の当たる地域と日の当たらない地域のアンバランスの問題、いろいろございますので、国鉄という狭い視野からではなしに、日本全体の国土の再開発と申しますか、あるいは人員の再配置と申しますか、そういう角度からこの問題を見直さなければいけない、こういうふうに思います。これが第一点でございます。
 もう一点は、やはり現状のまままいりますと、当分の間、いまの赤字財政状態は簡単には解消できない。私、責任者がそういうことを申してはいかがかと存じますが、いろいろ検討いたしましても、究極、たとえば一、二年のうちにこれを完全に黒字にするということは、非常に困難というか不可能に近いことだと存じます。したがって、第一に申しましたようなことが実現する間まで、ある程度、政府と申しますか、国民全体から、国鉄を利用なさらない方からもある程度の御援助をいただくということによって、それまでの経営をつないでいくというふうな形にしなければならないと思っております。
 現に昨日衆議院で成立いたしました予算をごらんくださいましても、ことしは実は約三百億円長期の金を借りまして、単年度の赤字を埋めるというふうな非常手段をとらざるを得なかった状況でございまして、これにもいろいろ理由がございますが、そういうふうな角度で相当国からの援助もいただきましたけれども、今後さらに三百億ほど長期の借り入れでもって単年度の赤字を埋めるという、企業経営上やってはならないといわれていることをあえて予算に計上してやらざるを得なかった、こういうふうな状況でございますので、第一のような新しい時代にふさわしい姿になるまでは、ある程度国民全般の、鉄道の利用者以外の方にも御援助、御協力をいただかなければやっていけない。それには何と申しましても国鉄内部の、私をはじめとする全職員、四十六万職員の企業経営に対する努力、これをやはり国民に認めていただかなければ、国民としては税金を国鉄に入れることに納得されないだろうという意味で、私は四十数万の全職員に対して、とにかく国鉄をここでもって何とか再建しようじゃないかというふうな角度でもって、皆の奮起を望んでいる次第でございます。
 たいへん簡単でございますが、全体の気持ちとしてはそういう気持ちでもって仕事をやっているつもりでございます。

○川俣委員 

環境の大いなる変化によって国鉄の守備範囲をどちらかというと狭めていこうというほかに、その仕事を委託というか転嫁していこうという考え方は、かなり論争のあるところだと思います。これはもう積み重なった結果、総裁がそういうような理論構成をしておるとすれば別ですが、いろいろとそれと逆な考え方もあるかと思います。
 そこで、それでは少し具体的に入っていきますが、世帯が大きくなるに従って、企業というのは事業部制というものを非常にとりがちなんです。とらねばならない場合もある。これはイデオロギーを別として、一つの頂点に全部権限を集中するのではなくて、権限をある程度地方に分散するという考え方も一つの組織体だと思います。そこで国鉄の組織が一番大きく歴史的に変わったものを記録されるのは、地域的横割り制から職能的縦割り制に昭和二十五、六年ですか、なったと私は記憶しますけれども、せっかく大きくなろうとするのが、逆に縦割り制にしたということで、三段階、本庁、地方機関、現業機関、こういうようなものにして縦割りにしてしまったというところに、私は私なりの感じ、赤字解消というものと逆行しているのじゃないかという感じもしておるので、その点ちょっと総裁の意見を聞きたいと思います。

磯崎説明員 

お説のとおり、こういう大きな企業でございますので、それを経営する組織をどうするか、これは非常に大きな問題でございます。私どもも外国の例を勉強いたしましたり、また電電公社等の例を勉強いたしましたりいたしました結果、いま先生のお説のとおり、やはり縦の段階であまり段階が多いのはよくない。なるべく私のほうから、たとえば私から現場の末端までの階段を少なくすべきだというのが、中間は一応省略いたしまして目下の結論でございます。昨年の秋、相当思い切って部内の機構を簡素化いたしまして、御承知かと思いますが、いわゆる事業部制とはちょっと違いますが、北海道、九州、四国、この三つは総局制にいたしまして、ほとんど総裁の権限を総局長に委譲いたしまして、たとえば職員のベースアップの問題とか、あるいは新規投資の問題とか、そういう特殊な問題を除きましては、各三つの島がおのおの地域の実情に合った経営をすべきだということで、三つの島は一応形としては独立の形にいたしました。逆に今度は本州は全部本社で直轄する。本州に十幾つの管理局がございますが、これを本社で全部直轄をする。最近非常に交通も便利になりましたので、また電話もよくなりましたので、わりあいに手取り足取りするということ自身も東京でやり得るということで、本州は全部本社直轄にするという形にいたしました。したがって本州は、本社、管理局、現場、この三段階でございます。地方は、いまの三つの島は、総局長、管理局長、現場、こういう簡素な姿にいたしまして、縦の段階を極力省略いたしまして、ごくスピーディに私どもの考えていることが現場の末端に浸透するような組織に変えたわけでございます。それまで四段階制をとっておりましたが、間を一つ抜きまして、そういう形にいたしました。
 これもいつまでも絶対なものと申しません。機構、組織でございますから、私の現在考えているところでは一番いいと思っておりますが、やはり組織というものも流動的でなければいけない、固定してはいけないというふうに思いますので、常に組織の欠点あるいは長所等を反省いたしながら、新しい理想とする組織に一歩でも近づけていきたいというのが私の念願でございます。

○川俣委員 

あちらこちらに質問が飛びますけれども、もう少し具体的に……。
 国鉄教育機関として鉄道教習所、職員養成所ですか、これが五、六年前に、すべて鉄道学園、こういうものに改革されたようですが、この鉄道学園というものは、目標がどういう目的を持っておるのか、そして教える内容はどうなのか。さらに、三点目は、労務管理的な、管理者になるための教育をするのか。学園長というのはどういう人が当たるのか、技術的な専門家を充てるのか、労務管理的な専門家を充てるのか、そういった面をひとつ………。

磯崎説明員

 教育の内容の詳細につきましては、後ほど担当の常務から申し上げます。
 私のほうといたしましては、実は鉄道学園と申しますのは、鉄道技術研究所と、鉄道病院、鉄道学園、この三つをある意味の職員に対する国鉄全体の仕事の進めぐあいに対する側からの機関というふうに考えておりまして、技術研究所と、病院と、学園、これが、多少ニュアンスは違いますけれども、そういう三つの考え方でもって鉄道をささえていこうという考え方でございます。
 そして、学園につきましては、内容は後ほど申しますが、いろいろございますが、大きく分けまして三つございます。
 一つは、何と申しましても部内の職員の再教育でございます。あるいは再教育と関連いたします職能教育でございます。
 一つは、部内の職員に対する育英教育でございます。これは四十数万もおりますと、やはりたくさんの有能な人材が埋もれております。学校を出ないで、すぐ中学なり高等学校から国鉄に入って、しかも非常に有能な人材がおります。これを毎年試験をいたしまして、いわゆる大学課程と申しておりますが、これを卒業いたしますと、大学卒業者と同じように取り扱うという意味の一種の育英機関でございます。これは全職員に機会均等に入学する機会を与えまして、そしていい一般の職員を部内で育てるという考え方からやっておりますが、これは事務屋も技術屋も両方おります。
 それからもう一点は新規採用時の教育でございます。最近、新規採用がちょっと減ってまいりましたけれども、地方の学園は主として地方におきます新規採用者、すなわち高校なり中学を出てすぐ鉄道へ入ってきた者は、まず安全を勉強しなければいかぬ、あるいはある程度の規則を覚えなければいかぬという意味の新任者教育と申しますか、新規採用者の教育を主としてやっております。したがって、もう一回申しますと、職能教育、育英教育、新規採用教育、大ざっぱに分けてこういうことになります。
 それから学園長は、具体的に申しますと、たとえば東京にございます中央鉄道学園の学園長は現在技術者がやっております。これはそのときそのときの最も教育に適当な人、いわゆる事務屋とか技術屋とかを問わず、最も教育に熱心な、しかも人格の高い適任者を持ってくるという意味で、たまたま現在は技術者がそれをやっているという形になっております。そういう意味で、学園長の人選はそういうことにこだわらないで人物主義でもってやっておるつもりでございます。
 教科の内容につきまして真鍋常務からもう少し詳しく申し上げます。
○真鍋説明員 学園の概要につきましては、ただいま総裁から申し上げたとおりでございます。特につけ加えて申し上げることはございませんが、国鉄の教育の態様といたしましては、一種学園、これは主要なところにございます。二種学園、これがそのほかの鉄道管理局所在地というような形で、全国で教育業務を遂行しておるわけでございますが、ただいま総裁から申し上げましたように、正規教育が主体でございます。正規教育の場合、各業種別に研究正規課程でございますとか、あるいは普通課程転換教育でございますとかというふうに各部門の課に分かれまして、正規の職能教育と申しますか、業務に必要な知識を与える教育を正規教育で行なっております。そのほか研修会というような形でも行なっております。これは最近の世界情勢でございますとか、国内情勢でございますとか、あるいは必要な最近の技術の進め方といったようなものについて、一週間程度の日程でございますけれども、必要な業種、必要なところにそういった研修会形式の研修を随時行なっております。
 大ざっぱに申しまして、そういった正規教育とそのほかの研修の教育というふうに分かれるかと思います。

○川俣委員

 さらに角度を変えます。
 機械化というのはさすが国鉄、非常な先駆者であるわけです。記録では大正時代にもうすでに例のパワース式統計機が五十台も入ったというので、これは一般の産業にも注目されておるわけですが、その後、パンチカード、ユニバク、アナログ、FACOM、そしてIBM、こういうようにいまではもう切符の果てまで機械で飛び出してくる、こういうようなことです。そしてそれは、能率向上、生産性向上ということにつながるわけですが、その際に問題は、機械化というのは国鉄四十何万の従業員たちの労働の問題と必ずぶつかるわけです。その際に、機械を入れる、能率をあげる、そのために人を減らすということではなくて、その人が楽になる、別の仕事ができるという方向との関係がある。そうなると、国鉄にはせっかくの大国労という大組織がある、こういうものとの話し合いは、械機化一つやるにしても常にやっていると思うけれども、総裁、それについてわれわれの耳に入るところによると、それは交渉がこじれたのか、やってないのか、頭から認めないのか、それがだんだん大きくなって、交渉がこじれた飛ばっちりを社会が受けて、ストライキになり国鉄闘争とこうなる。それに対して総裁、どのような考え方を持っていますか。
○磯崎説明員 何と申しましても一世紀たった交通機関でございますので、非常に古い面もたくさん残っております。これの能率をあげるその根本は、いま先生おっしゃった機械化だと思います。たとえばみどりの窓口、あれは世界でも一番大きな出札をやっているわけでございますけれども、こういう今後の機械化を進めるにあたりましては、お説のとおりいままでそれに従事していた職員の数が必ず減ってまいります。当然過剰人員の問題等がいろいろ出てまいります。実は、いままでの一番大きな問題は、機関助士を廃止して機関車乗務員を一人にするという問題で、これは数回にわたってストライキという形で世間に非常に御迷惑をかけた一つの問題でございましたが、これもおおむね片づきまして現在実行中でございますけれども、今後も小さい面でいろいろ機械化していかなければならない面が出てまいります。私どもといたしましては、近代化、機械化に対する根本方針として、組合との間に協定を結びまして、大綱は本社と本部の間できめていく、実施上の諸問題は、地方の管理局長と対応の組合できめていく。もちろん、組合が国労、動労等ございますが、おのおのの段階で対応機関と実施上の問題をきめていく、こういう形でやっておるわけでございます。
 もう少し詳細につきましては担当常務から申し上げます。

真鍋説明員 

機械化、近代化につきましては、各組合と近代化につきましての事前協議協定を結んでおりまして、事前に近代化計画の説明をいたしまして組合の了承を得ることをたてまえといたしております。労働条件につきましてはそれぞれ団体交渉を結びまして、本部、本社間の交渉が妥結いたしました後地方に移って、地方対応の協議をするというような形で進めております。
○川俣委員 さっきの赤字の本論に入る前に、もう一つ角度を変えて資材、施設の関係を。何といったって国鉄の他から見る魅力というのは、うんと資材を使ってくれる、うんと物品を買ってくれるという社会的なポジションを持っておることだと思うのです。それを二つ、三つ質問してみたいと思いますが、日本国有鉄道使用物品規格調整委員会ですか、これが過去何年前かにできたと思いますが、たとえば新幹線のレールをこれだけ必要だということで計画が成った。それを調達部でやる場合に、どういうような手法で、たとえば委員会の承認を一々得るのか、それともどこの決裁でどういうようなものをどこへ注文して入るかということを、担当理事でけっこうですから……。
 それから、質問をまとめますが、物品出納職員の保管にかかわる物品の忘失、損傷等による損害弁償責任が過去は軽過失主義であったのが、これが今度重過失主義になったのだ、これはどういうことからきたのか。物品、資材に対するそういうあれがあったのかどうか。そのためにこういう重過失主義に変えたのか。
 それから三つ目は、国鉄の業務運営の合理化に資するため特に必要がある場合国鉄が関連する事業に現物出資ができることとなっています。これは事例的にいうとどういうことなのか。
 それから四つ目は、私は石炭対策特別委員をやっておるから言うわけじゃないのですが、石油がいつどのように変わるかわからない。マラッカ海峡をふさがれればもう日本の石油は詰まるわけでございます。そうなると石炭というものをもう一ぺん思い起こしてみる必要があるんじゃないか。これは全然角度が別ですし、委員会が別ですけれども、その場合に、国鉄は石炭から電化へどんどん??石炭に対する利害得失というか、エネルギー革命だけじゃなくて、もう設備一切、機関車から一切もう石炭の時代は終わったんだ、総裁はそう考えられておるのかどうか、その辺をお聞きしておきたいと思います。

磯崎説明員 

第一の問題で、物品調達の問題、先生が例にお出しになりましたレールの問題について具体的に申し上げます。
 私もあまり詳細には存じておりませんが、まず、たとえば新幹線では、いままでは五十キログラムのレールであったものを今度六十キログラムのレールにするということが第一の問題でございます。その場合には、規格調整委員会の前に、担当の理事者並びに技術研究所で材質その他全部検討いたしました後、六十キログラムレールという世界にないレールを初めて採用すべきかいなかということをまず検討いたします。採用すべきだということになったら、その規格その他につきまして、いま先生のおっしゃった規格調整委員会にかけまして、それじゃいよいよ山陽新幹線のレールは六十キロでやろうというふうにきめるといたします。レールにつきましては、ちょっと一般の物資と調達の方法が違っておりまして、これは製作請負契約、すなわち何トンのレールをつくってくれという契約であります。ですから、できたものを買うという契約でなしに、私のほうでは製作請負契約ということばを使っておりますが、つくることの請負の契約であるということで、現在は富士と八幡が一緒になりまして新日鉄になりましたけれども、現在レールの供給量を持っておりますのは新日鉄と日本鋼管、この二社だけでございます。一時は輸入いたしましたが、もう輸入は一切やめておりまので、いま二社だけでございます。日本鋼管のほうも始めたばかりでございますが、なるべく、私のほうといたしましては、使う土地に近いところのものを使うということで、輸送費の軽減をするために、たとえば今度の山陽新幹線は八幡とか、日本鋼管の福山のものを使う、あるいは東北は釜石を使うとか、運搬距離その他によりまして納入してもらう場所をきめまして、そしてそこで製作請負してできたものを持ってくる、こういう契約にいたしております。
 これは非常に異例なものでございまして、たとえばセメントみたいなものでありますと、これは簡単にできたものを公開競争入札で買うという形になります。契約につきましては、いまの製作請負契約、それから公開競争入札、それから車両のように随意契約によらざるを得ないものは随意契約、それからこまかい雑品につきましては見積もり合わせの随意契約というふうな、四つないし五つの契約方法によって物を買っております。
    〔委員長退席、増岡委員長代理着席〕
 それから第二の問題。ちょっと私、いま物品の出納の問題ははっきりいたしませんので、後ほど申し上げます。
 それから、現物出資の条項がお説のとおり入っております。これは二つ問題がありまして、一つは鉄道建設公団ができました際に、それまで私のほうでしかけておりました線路あるいは土地等を、鉄道建設公団にたしか百八十何億の現物出資をいたしました。これが一回ございます。それからもう一つは、名古屋の臨海鉄道をつくりましたときに、たまたま熱田までの貨物線を持っておりました。これはまだ営業する前の工事中のものでございましたが、それを法律によりまして現物出資いたしました。この二つだけが過去の例でございます。私どもは、今後国鉄が、たとえば地方と共同経営して鉄道をやろうというふうな場合には、私どもの生きている鉄道自体を現物出資するようにいたしてほしいということをいま政府にお願いいたしておりますが、まだ本国会に出るか出ないかはきまっておりません。過去の例といたしましてはその二回だけでございます。
 それから石炭の問題でございますが、これは非常にむずかしい問題で、私らのようなしろうとがなかなか軽々に結論を出せませんが、現在の私どもがやっておりますことをはたからごらんくださいますと、やはり石炭に対する訣別というふうな形になっておると思います。今後どういうふうにエネルギー問題が発展するにいたしましても、やはり石炭をたいて捨ててしまうというあの原始的な、一世紀前の姿はもう戻ってこない。やはり先生のおっしゃったとおり、石炭をもっと有効に、たとえば原料に使うとかいう方向に石炭の使い方は変わってくると思います。あるいは最も効率のいい燃焼のしかたをして電気に変えるということがあろうと思いますので、私どもはじかに石炭を、燃焼率の悪い一〇〇のうち二八%ぐらいしかエネルギーにならない、こういう蒸気機関車による石炭の使用というものにはもう戻らないのではないかというふうに思います。やはり、石炭を中心といたしましても火力発電なり、あるいは将来の原子力発電なりというものでもって鉄道を動かすという形に変わっていくのじゃないかというふうに考えます。
 物品につきましては、いますぐ調べさせますので、たいへん申しわけございませんがよくわかりませんので、後ほどお答え申し上げます。

○川俣委員 

そこでぼつぼつ赤字問題、さらにその前に、これは赤字線だ、こう名ざしをするなら??管理費というのは管理費でないものとどういう割合になっておるものでしょうか。それから赤字線だときめつける、世にいう線路ごとに、線名ごとに。その場合に、管理費の配分のしかたがどうなのか。これは常務でけっこうです。
 それから、国鉄の場合は、国鉄だけじゃなくて私鉄もそうですが、一般会計から独立して鉄道会計というものがある。これは早くからでき上がったわけでございましょうが、なぜ鉄道会計というものを一般会計から独立分離させたかということを、そこは総裁に聞きたいのだが、なるほど総裁のように、ずっと下で、総裁におなりになる前に、過去何年間国鉄に従事してみると、一般会計とは違うな、こういうことを感じたことがあればお示し願いたいと思います。

磯崎説明員 

先生の御質問の例の赤字線の計算のしかたでございますが、これはいろいろ議論がございましたので、私のほうといたしましては、昭和三十九年に、当時における日本の原価計算の大家の諸先生にお願いいたしまして、鉄道の原価計算規則というものをつくりました。それによりましていま御質問の管理費の配分、主として管理費は輸送量によって配分いたしておりますが、管理費の配分のしかた、あるいは資本費の配分のしかた、償却費あるいは利子等の配分のしかた等を線路別にきめまして、そして現在赤字線、黒字線の計算をいたしておるわけでございます。
 最近またもっとこまかくやろうということで、実は昨年一年かかりまして、いま日本で一番原価計算の大家といわれます一橋大学の番場という先生にお願いいたしまして、十人ほどの学者に集まっていただきまして、一年間もう一ぺん原価計算の方法を洗い直しました。主として今回は分岐駅、ジャンクションにおける駅の経費をどう分けるべきか、あるいは財産をどう分配すべきか、というような相当具体的な問題についてさらに検討していただきまして、昨年の十二月に御答申をいただいたわけでございます。そういうふうに原価計算のやり方につきましては、世界の鉄道いずれもいろいろめいめい違ったことをやっておりますが、私どもは、昨年の暮れにできました原価計算規則が世界で一番進んでおるというふうに思っておりますが、それによりましていまの管理費、資本費その他の配分をいたしておるわけでございます。
 これはまたおりを得まして詳しく御説明??私も実はあまり専門家じゃございませんので、その答申によりまして一ぺん詳しく御説明する機会を得たいというふうに思っております。これは学者の間で相当議論が出まして、もうほとんど完成品に近いというふうな評価も学界の中では出ているようでございます。
 それから、国鉄を特別会計に分けましたいきさつその他はもう御承知のとおりでございまして、やはり政府の一般会計は税金をもって支出をまかなう。国鉄の特別会計は御承知のとおり運賃収入でもって経費をまかなう、こういうたてまえできたわけでございます。これをずっと明治の時代からやってまいりまして、さっきおっしゃった昭和二十四年に公共企業体になりましたときに、この制度をそのまま踏襲いたしまして、そうしていまもなお特別会計制度といたしまして、政府機関の特別会計として国会の承認もいただいておるわけでございますが、やはり私は、国鉄のようなこういう企業を経営する場合に、企業経営的な感覚もぜひ必要だというふうに思います。一般会計と同じように、収入と支出とを全然リンクさせないで、歳入は歳入、歳出は歳出ということではやはりいけないので、私どもといたしましては、収入を見ながら経費を見ていくというふうな特別会計制度が必要ではないかというふうに考えているわけでございます。

○川俣委員 

そこで、重量方式による原価計算というのは、これはもうどういうあれから見ても矛盾だらけだと思います。これはもう検討されているというから、担当常務がこの次にお見えになったときにでも、また日を改めて質問なり論争をしてみたいと思います。
 ただ、いま総裁がいみじくも私が言おうとしたのをおっしゃってくれたようなんだが、官庁会計方式、いわゆる現金主義による官庁会計方式から、発生主義による企業会計方式に変えようという努力はわかる。ところが私らは、総裁のかっこう一つ取り上げても、先入観で見ておるからそうかもしらぬが、どうも民間企業ががんばっているというにおいがしない。赤字になっても、民間の社長だったらどんな顔しているだろうか。会計方式だけ民間企業のいわゆる発生主義による企業会計にしようという気持ちがあるのだということを口に言っていながらでも、もしあなたがある企業の社長だったら??私はそういうにおいがしないのだ、あなた方国鉄一家がほんとうにこの赤字と取り組もうというにおいがしない。この論争は、また御担当の理事でもお見えになったときに、日を改めます。
 そこで私は、赤字問題ということとからんで、総裁のほうで非常に苦労しておやりになっているようだが、生産性向上運動、これにからませて質問したいと思います。
 私は、生産性を上げるということは必要だと思います。しかし、当局がやっておる生産性向上運動というのは、どうやら目的じゃなくて、何かの手段というか、その辺をこれから少し質問なり論争していきたいと思います。
 それでは、生産性向上運動というのは、どこの国で生まれていつごろ日本に上陸してきたかということをどのようにつかんでおるか。それから、私たちから見ると、去年、おととしあたりから大国鉄の赤字に対して、生産性向上運動というのがおそい。企業ではもう貿易自由化というので、十何年前から、生産性向上をやらなければならぬ、それで日本の場合もいわゆる日本生産性本部というものができたようです。これに対しても質問します。
 日本生産性本部に対して、国鉄当局はどのように思っておるのか。あれを指導理念を生む一つの機関だと思っておるのか。日本生産性本部というのはどういうような組織体で、どういうような資本でつくられて、どういうような経費でやって、そうしてどういう指導をやっておるのか、こういったところもお伺いしたいと思います。

磯崎説明員 

生産性本部の詳細につきましては、担当常務から申し上げさせます。
 ただ、私が現在部内に生産性運動を持ち込みました、これは確かに先生のおっしゃったようにもうおそかったかもしれません。もっと早く、まだ国鉄が黒字だった時分からこういう問題にもっと真剣に取り組むべきだった、この点は私大いに反省しているところでございます。先ほど先生のおっしゃったとおり、私をごらんになっても、民間会社の社長さんとは気魄が違う、赤字に耐えているような顔じゃないとおっしゃった、まさにそのとおりかと私は存じます。その意味で、もっともっと早くからこの生産性運動を私としては真剣に始めるべきだったというふうに思います。
 私どもといたしましては、この生産性運動は一つの精神運動というふうに考えております。生産性本部の三原則その他につきましては、先生が御承知のとおりでございますが、百年たって、このいわば老体化、斜陽化した国鉄を、冒頭に申し上げましたように、二十一世紀に向かってさらに発展させ、要らないものを切って、ほんとうに国民のお役に立つものだけを残して、そうして将来の国民の福祉のお役に立ちたいというふうな姿勢にするためには、やはり部内の気持ちもここで変えなければいけない、いままでのお役所主義の、これは私以下全部でございますが、お役所主義の考え方では、もうこの競争激甚な輸送競争にはついていけないということを考えまして、ここでもって一種の精神の、何と申しますか、躍進と申しますか、改革と申しますか、そういう意味の生産性運動を、これは国鉄職員としてのかまえを私は考えました。
 私が申しております生産性運動の一番のポイントといたしましては、二つございます。一つは、国鉄を利用してくださるお客さんあるいは荷主に対する誠意の問題、真心と申しますか、誠意の問題、これが無事故に通じあるいはサービスに通ずるという意味で、私はどうしても国鉄職員としては国鉄の利用者に対する誠意がなければいけない、これが第一でございます。
 それから第二は、国鉄そのものに対する愛情がなければいけない。すなわち、国鉄はもう倒れかかっている。これは悪いのはまわりが悪いので、おれのほうではどうにもならぬのだということではなしに、何とかしてお互いの力で国鉄を盛り返そうじゃないかという企業に対する愛情、この二つを私は生産性運動の骨子としております。
 その点、生産性本部のいっているいわゆる三原則とは多少違っております。三原則の二番目にありますとおり、各企業で実情に応じてきめるのだというふうに書いておりますが、私なりの解釈といたしましては、顧客に対する誠意、それから企業に対する愛情、この二つが私は生産性運動に対する国鉄職員のかまえであるというふうな感じから、この運動を部内に導入いたしたのであります。たいへんおそかったというふうに私は率直に思っております。もっともっと、こういうことは左前になったときでなしに、一番隆盛であった三十五、六年、ちょうど十年前ぐらいに、先生のおっしゃったとおり取り入れているべきであったということを、率直に私は反省いたしております。

○川俣委員 

それでは、必ずしも生産性本部の指導理念とは意を異にするという口であるのだが、それでは一体、具体的に国鉄ではどのようにこの赤字対策をするのか。われわれは国会議員の立場であなた方に言わなければならぬ。それは、生産性向上運動をやっています、精神面だ、そしてこのように教育している、それでは何かテキストでもつくってやっておるのかどうか、それとも口だけで言って横着しておるのか。具体的にやっているならやっているような、具体的なことを教えていただきたいと思います。

○真鍋説明員 

現在国鉄でやっております生産性教育は、一つは生産性本部の研修に参加しておるという形で行なっております。これは昭和四十四年約百七十名ぐらい生産性本部の研修に参加いたしました。四十五年度は千名の計画でこの生産性本部の研修に参加いたしております。四十六年度は千五百名、この程度の計画をいたしております。
 この生産性本部の生産性研修が中心でございますけれども、その研修を受けました指導員が、これは各国鉄の学園で、それぞれの研修場面で、生産性教育を行なっておるという形で進めております。
 テキストでございますが、これは生産性本部でおつくりになっておられますそれぞれのテキストを借用しておるのが多うございますが、その他各学園それぞれで、講師が自分で勉強いたしましたり、あるいは他の資料からとってきたようなものを突き合わせましてテキストをつくっておるのが実情でございます。

○川俣委員 

それでは、おたくが使っておる唯一のテキストですが、「指導技能研修会議(生産性運動)」これを一生懸命に努力されておると思います。敬意を表します。そのとおりやっておりますね。
○真鍋説明員 テキストはそれぞれの学園で、そのときどきの研修に合わせまして作成をいたしております。個々のテキストを全部目を通しておりませんけれども、それぞれその時点、その時点で研修会議のテキストをつくっておるというのが実情でございます。

○川俣委員 

それでは常務、その代表的なテキストを抜粋して続みますと「総評の指導理念としての“親方日の丸的イデオロギー、政治闘争重点主義”は本年八月、首脳部交替となって現われ、その指導の誤りがはっきりと証明され」ている。そのテキストにこう書いてある。これが生産性向上運動の精神面の教育をしておるのだという総裁の考え方であれば??まずその前に具体的に親方日の丸的イデオロギーというのはどういうことですか。
○磯崎説明員 これは国鉄がよく労使を問わず外の方から言われることでございまして、ごく端的に申しますれば、先ほど先生がいみじくもおっしゃいましたが、経営で赤字が出たって国が何とかしてくれるのだからいいみたいな考え方、全部国家で補償すればいいじゃないかというふうな考え方、これが世間からいわれる親方日の丸だと存じます。これは労使の問題を越えまして、国鉄全体に対する世の中のあるいはマスコミの風当たりの一番強いのは、結局赤字が出たって国が何とかするのだ、税金で何とかしてくれるのだ、この思想、すなわち経営者として、あるいは働く者として、企業の赤字に対する一つのがめつい意欲がないということ、これが私は親方日の丸だというふうに考えます。赤字が出たっていいんだ、それがもう、端的に申しますれば、親方日の丸だ。世間からいわれたままをそのまま申しますれば、いま申しましたとおりになるというふうに思います。


○川俣委員 

それではさらに抜粋して読んでみますと「現在の社会党及び総評は、後進国社会構造すなわち、選挙権もなく、労働基本権もなく、圧迫・搾取の時代を前提とした指導理念を未だに踏襲しているといわれても仕方がない。これがため、労働組合が自らの力を効率的に活用する能力もなく合理性に欠けている。しかも、現在の労働組合ほど重複投資するところはないといわれている。というのは年間千億円の金を消費していることだ。千億円の資本金を持つ会社は、日本に五つあるかなしであり、この資本は莫大な利益を生んでいるのに、組合は只消費するだけだ。ここに労働貴族、労働ボスの温床が生まれるのだ。」これは教科書です。そこで「共産党でさえ現在の運動方針は従来の方向から一八〇度の転換を行ない、議会民主主義の堅持と設備の近代化を打ち出している。」これは共産党をほめておるわけです。だとすると、私も社会党の一員に入りまして、これから国会議員の一人として国労というものを指導していかなければならない。少し精神訓話を教えてください。共産党のほうの考え方がいいのか、社会党や総評はだめなのか、お聞かせ願いたいと思います。
○真鍋説明員 その項でございますが、これは講師の個人的な意見という形で挿入しました、どうも正規のテキストでない部分に載っておるものでございますが、これにつきましては確かに穏当でないということで、私どもの目に触れましたときに、すぐそれにつきましては、副テキストのような形でございますけれども、使用することを中止させております。それは中止いたしましたあとは使っていないと存じておるのでございますが、確かに、個人的な意見とは申しましても、表現が問題があるということで、まことにその点につきましては申しわけないと思っております。

○川俣委員 

そういうように簡単に言われるとなんですが、「日本経済の現状」というのが、非常に努力のあれが見られると思うのですが、その中で、深刻化する労働力不足云々、「社会発展の不均衡が各所に山積している。」これは国鉄経営者から見ると、国鉄のいまの四十数万の労働者というのは、いまの国鉄全体の経営上、ずばり言って人が多いのか少ないのか。少なければどのくらい、多ければどのくらいと、ある程度めどを言ってもらいたい。
○磯崎説明員 その点は、私のほうといたしましては、現在考えております??この間、一昨年国会で御承認を得ました財政再建措置法によりまして約十万人減らすということになっております。これはいわゆる機械化、近代化で、先ほど先生のお話しのとおりどうしても人が余ってまいります。しかし、もちろん首を切るということはいたしませんで、結局減耗の補充をしない、そういたしますと、いまお読み上げになったことにちょっと触れておりますが、非常に地域的にあるいは職種的に職員のアンバランスになってくるというようなことで、これを地域的、職種的にならさなければならないという意味で、私どもとしては、国鉄全体の経営を十万人前後減らす必要がある。しかしこれは、激しい方法でなしに、徐々に、昭和四十四年から五十二年まで十年間で減らしていこう、こういうような考え方でございます。また、管理機構につきましては、先ほど申しましたとおり、思い切って中間段階を一つ減らしまして、また本社の最高幹部の頭数も減らしました。極力管理陣営も減らしまして、全体の風通しがよくなるような組織でもって考えていきたい、こういうふうに思っております。


○川俣委員 

その他、せっかくつくったテキストを、一々われわれ言うわけではないのですが、自分に与えられた時間もぼつぼつなくなったのだが、やはりおたく方のテキストというものは、生産性向上運動の目的とか原則というものは非常に勉強したと私は思います。生産性を高めて雇用を拡大するというのが一つでしょう。そのためには労使が協力しなければならない。それから、いわゆる生産性向上で生産を上げた成果ですね、これをどうするかといったら、労使協力の上にやりなさいということでILOも教えている。そうでしょう。日本では戦争前にILOが教えておる。労使協力の上で物というものはつくらなければ、これからの近代国家には向かえないのだよということから出発しておると思う。それではどうもいまの国鉄の生産性向上運動というのは、考え方は頭の中ではわかるにしても、目的は人を減らしていくのだという方向の手段のような気がする。どうでしょう。


磯崎説明員 

その点、先生がそうごらんになられることは、非常に私どもとしては力の足りなかった点だと思いますが、私はやはりそうは思っておりませんで、国鉄というものが、冒頭に申しましたとおり、いまのままではもう立ちぐされになる、これははっきりしております。ですから、いまの姿のままで切るべきものは切る、伸ばすべきものは伸ばす。そして、あと百年寿命を延ばすにはどうしたらよいかというふうな考え方でなければいけないと思います。したがって私は、あくまでも二十一世紀の国鉄の姿というものを頭に描きながら、現在のいろいろなあかを落とし、矛盾を克服するという努力をしているつもりでございますが、はたからごらんになって、ただ人を減らすことだけが目的かというふうにごらんになられると、非常に私どものやり方がまだまだ力が足りないというふうに思います。私はやはり国鉄の百年の歴史を振り返った上で、さらに今後百年どうするか、そして、国民が国鉄を喜んで利用してくれる、国鉄の職員が喜んで働ける、そういう職場をつくることがわれわれの目的であって、生産性運動は一つの手段であるというふうに私は考えております。
○川俣委員 これだけは私はちょっと言わなければならぬが、私の言うのはそうではないのだ。雇用の拡大というのは第一原則だ、こういうのでしょう。ところが、冒頭総裁は、守備範囲を狭めなければならないという経営方針を出されたでしょう。だとすれば、守備範囲を狭めるというのは、いまの四十数万というのは人が多過ぎて、これを一部民間におろすとか、あるいは多角経営をするということも考えた結果が、その方向に生産性向上運動をやっておるのか、そうじゃなくて、いまの四十数万というのをさらにベースアップも吸収して、しあわせに、将来の労働者というものを、責任をもってやっていくのだという方向であるのか、その辺がどうも矛盾しておる。


磯崎説明員 

その点はもう少し詳しく申し上げさしていただきますと、これは政府の御方針でありませんで、多少国鉄総裁としての意見だというふうにお聞き取り願いたいのです。
 現在約二万キロの守備範囲を持っております。この二万キロのうち、私どもといたしましては、二十一世紀になっても必要だと思われるのは一万キロだというふうに考えております。残りの一万キロはほかの交通機関ができる、あるいはそれができなければ、ソシアルミニマムとして動かすという意味の現状維持的なものが約一万キロございます。ですから、守備範囲を減らすと申しますのは、前のこれから伸びていく一万キロ、これはたとえば複線電化するとかというふうな形でもってどんどん伸びていく。そうして国民の大きな輸送需要に応じる。それからあとのほうのグループの一万キロ、これはどうしても企業経営としてはやってまいれません。これは必ず赤字が出ます。ということは、過疎地帯であり、人も少なく、工業も少ない、旅客、貨物輸送はどんどん落ちてくる、こういう地域でございますので、この部分は、いま申しましたとおり、一部分はやめる、一部分は地方と共同経営する、あるいは最後は、残ったものは国鉄が運営するけれども、それから出てくる赤字は国でもって持っていただくというふうな、純粋公共事業として運営しなければならないだろう。そういう意味の守備範囲の縮小でございます。
 同時に、先ほど申しましたとおり、これからいよいよ新幹線の時代になってまいると思います。幸いにことしの予算で、新幹線??東北、上越をお認め願いましたし、また過般の建設審議会でも、各党の諸先生がお寄りになりまして、札幌あるいは鹿児島というふうに新幹線を延ばす建議もなすったわけであります。今後これにいろいろ財政的な問題があると存じますが、私どもは、いわゆる雇用の拡大というのは、そういう新しい面についての雇用の拡大を考えるべきである、いつまでも古い十九世紀の単線蒸気鉄道の姿のままの鉄道ではだめなんだ、やはり複線電化鉄道、しかも主要な地点を高速で結ぶ高速の複線電化鉄道、いわゆる新幹線鉄道、あるいはもう一つ超高速の鉄道というものに向かって邁進する、そこに私は新しい雇用というものが生まれてくるのであるというふうに思います。いつまでも古い鉄道、百年前に生まれた鉄道をそのまま守ることは、決して雇用の増大にならないというふうなこともございまして、捨てるものは捨てる、そのかわり伸ばすものは伸ばす、それによって全体としての雇用が拡大していく。生産性運動の原則の第一の雇用拡大というのは、必ずしも同じ企業内ということだけでもないように伺っております。たとえば新幹線ができることによりまして、東北と東京がほとんど一体になってくるということになれば、東北地方に大いに産業も伸びる。そうすると、そこで雇用が拡大するというふうなことも私は考えていいと思います。たとえば東京?仙台が二時間で結べるということになれば、何もわざわざ東京に工業を持ってくる必要はないというふうなことで、そういう意味の日本全体の雇用拡大に、たとえば現在の東海道新幹線も相当役に立っているというふうに私は考えますが、これが東に西に延びてまいりますれば、日本の全体の雇用拡大に必ず役に立つと同時に、国鉄自体の雇用拡大にもなってくる。しかし古い単線蒸気鉄道はやはり姿を消していくべきだというふうなのが私の考え方でございます。ただしこれは政府全体の御意見かどうかわかりません。私自身の考え方でございますので、その点だけお含み願いたいと思います。
○川俣委員 それでは総裁、個人的なお考えという注釈つきでお話を伺ったのだが、そうすると今度は、国鉄の労働者のほうから見ますと、これからどうなるだろうということに対して、いやこれからは近代経営をするのだ、経営は拡大していくのだ、そして、いまの四十数万というのは、いままでのような国鉄一家の中での従業員じゃないかもしらぬけれども、国鉄が近代経営することによって、ほかのどこかで働く場所が拡大されるのだ、こういうことですか。


磯崎説明員 

その点は、多少違いますのは、ある程度の時間的な余裕があるということでございまして、現在私のほうでは年間約一万人の退職者がおります。ですから、もしかりに一人も補充いたさなければ、十年間で十万人減ってしまいます。そのほかに途中で死んだり私事でやめたりするのが二、三千人おりますので、そういうものを補充しなければ十数万減るかと思いますが、そのうちやはり技術者あるいは若年労働者は補充しないわけにいきませんので、それは補充いたします。そういたしますと、国鉄全体の職員数は減ってくるけれども、いまこれからやめていく連中、大体五十五前後でやめますが、これはいずれ適当に第二の人生を見つけてやっていってもらうということで、いま先生のおっしゃった、副業的なものであまり多数の職員を吸収できるとは私は考えておりません。それほどこれから人をよけい使う副業というものは成り立たないと思います。たとえばホテルをやるにいたしましても、あるいはパイプラインをやるにいたしましても、それほどの大きな人間は吸収できない。しかし十年たてば自然に約十万人ぐらいは減ってくる、こういう考え方でございます。
 そのつなぎにつきましては、いま御指摘のとおり、ある程度規模が縮小してくる。しかし、たとえば東北新幹線ができれば、あそこにやはり一万なり二万なりの人間がごそっと全然別にふえるわけでございます。そのふえるものを、いまやめる人ではもう年をとっていてだめなんでございますから、それは新しい供給源から人間をとってくる、あるいは現在の職員をそちらの新幹線に適した職員に教育し直すというふうな方法でもって雇用の維持を続けていく。そして、ある時期に新幹線が非常に大きく膨張するというときには、結果的に見れば雇用は質的には相当拡大されるというふうに考えます。副業と申しますか、関連事業でそうたくさんの人間が吸収できるというふうな期待は実はあまり私は持っておりません。これはもうせいぜい万になればいいほうだろうというふうに考える次第でございます。


○川俣委員 

どうも、自然減耗が十年に十万人できるし、長い目で見てくれということじゃ、いま働いている労働者の四十万の不安にはこたえていないような気がしますよ総裁のあれは。やはりもう少し、赤字はこのくらいあるのだ、これからこういう経営をしなければならぬのだ、だからこれだけの人員でやっていかなければならぬのだ、それには自然減耗はあるけれども、若い人は雇用に入れていかなければならない、近代感覚を持った者はこういう仕事をやるのだというビジョンが、労使であまり話されていないようなんですよ。そうだと思います。きょうは組合のほうは呼んでおりませんけれども……。
 それから、常務理事がさっき、そのテキストはちょっと穏当じゃなかった、取り消しますと、こういうことを率直に言われて取り下げましたけれども、私が言うのは、そう簡単に取り下げてもらっちゃ困るんだ。それじゃあなたの気持ちが私にはわからぬものな。そうじゃなくて、ILOが教えておるのは、労使の協力の上に立たなければならないのだということの前提として、これは決議でありますからちょっと読んでみますと、こういうような決議なんです。「労働者の団結権、団体交渉権、団体行動権が確立された上に立って、労使の協力を達成するための計画がこの決議である。」というように教えてある。ところが、いまのように国鉄は交渉権はあまりフリーじゃないし、ストライキ権はとられたし、そういう中で、生産性向上というのはおまえら協力しなければだめなんだということだけのテキストを一方的にやると、いまのような事態、不当労働行為じゃないかという??山形の新庄が九十何名第二組合に入った、こういう結果になる。こうなると、具体的で第二編になると思いますから、私の持ち時間もありませんけれども、問題は、いまの総評の指導理念は、総裁がやろうとする生産性向上運動にどうしてもじゃまなのかどうかということを国会で披瀝してほしいんだ。どこがまずいのか。どういうような態度であればいいのか。それとも、ただ黙って自分についてくるような、音を出さないでついてくるような労働組合でなければ生産性向上運動には適しないのだというものなのか。団体交渉権と団結権と行動権を持った労働組合じゃだめなんだと言われるのか。その辺を少しお話ししていただかないと、せっかくぼくがきょうの質問の機会をもらったのが無意味なんだ。


真鍋説明員 

生産性教育の中では、先ほどから申し上げておりますように、国鉄の現状の中で、労使が協調して生産性を高めていこうではないか、新しい国鉄をつくろうではないかという一点に尽きますので、そういうような教育に終始しておるわけでございます。
 ただ、それに対しまして、たとえば合理化反対というようなことでの闘争を組む、違法なストライキを計画するというふうなことについては、われわれ管理者は、当然のことでございますが、それについて十分指導をし、注意を与えるというような考えで教育をいたしております。したがいまして、組合別にこの教育をどうする、あるいはこの教育によりまして組合の組織についての何らかの介入をするというような不当労働行為につきましては、毛頭そういう考えはございませんし、たとえばそういう疑いがあるような言動につきましても、そのつどつど注意をしておるというふうなのが実情でございます。


○川俣委員 

具体的な例をこれからやれと言われればかなりありますけれども、それじゃ総裁に最後にお伺いします。
 さっきも話したように、会計方式は企業会計というあれをとったけれども、ある一つの会社の社長であれば総裁はどういうことだったのだろうかとぼくは思う。ところが総裁は、民間のそういう苦しみのにおいはしない。組合は親方日の丸的なイデオロギーだと言われるかもしれぬけれども、どうやら親方日の丸は経営者のほうにもあるんじゃないか。それでおれのほうにだけついてこいと組合を引っぱる。生産性向上運動をこれからまだまだ推し進めていくという気持ちがあるとさっきおっしゃった。
 総裁に最後に伺いますけれども、不当労働行為のようなことは一切やっておりません、こうおっしゃる。それじゃ、せっかくあのようなテキストは取り消すとは言うものの、ずっと一貫したものは、ただ労働組合は協力しなければならないのだということで一貫しているわけであります。だとすれば、いまの国労というものに対して総裁はどういう考え方を持っているのか、どういう希望を持っているのか、そしてこれからどういうふうに対処しようというのか。


磯崎説明員 

私事を申し上げてたいへん恐縮でございますが、実は私は、二十数年間いろいろ組合との仕事をいたしておりまして、多少そういうことも知っておるつもりでございますが、これだけの危機に立ちまして、もし私が民間の経営者であるならば、あるいは民間の経営者に国鉄の現状をお話ししますと、やはり今後切るべきは切らなければだめなんだ??切るというのは首切る意味じゃございません。企業範囲を縮小すべきものは縮小するのがあたりまえだ。たとえば工場が二つある。能率のいいのと悪いのとある。そうすれば、企業が左前になれば、その悪い工場を閉鎖するというのはあたりまえなんだ。そういう教えをいろいろ受けておりますが、先ほど申しましたとおり、国鉄の二万キロのうち一万キロは能率が悪くてどうにもならぬ。しかし、私どもはやめる自由り持ちません。これはもうやめるわけにいきませんので、赤字でありながら経営せざるを得ない。しかし、その限度においてはどうしても国からめんどうを見ていただかない限り、企業経営としては成り立たないのだ。これは親方日の丸といわれても私はいたし方ない。その一万キロをなくなし得るまでは、その限度においてはやはり税金からめんどうを見ていただくという親方日の丸にならざるを得ないと私は思っております。しかし、そのなるについては、やはり自分でもってできるだけの努力をして、企業経営的なものをやっていく、そして国民に対する負担を少しでも軽くするというのが、私ども経営者なり中で働く職員の義務であるというふうに私は思います。したがって、いろいろ先ほどから申し上げさせていただきましたけれども、とにかく現在日本の最大の企業であって、しかも最大のピンチに見舞われている国鉄といたしましては、やはり部内で労使一緒になって国鉄の再建をまじめに考えるということにつきましては、私はもうはっきり申し上げて、何らそういう点については私自身考えに迷っている点はございません。
 ただ、先ほど申し上げましたとおり、国民に対する誠意もなければ、企業に対する愛情もないという、これでは私はどうにもやっていけないと思うのです。その点、全職員が最小限国民に対する誠意と企業に対する愛情、この二つを持ち得るような運動、精神運動を今後とも続けてまいりたい。それは私は決して労働運動と相反するものではないという確信を持っております。
 その証拠といたしましては、公共企業体等労働関係法では、第四条に、職員は自由に組合に加入することもできるし、加入しないこともできるのだということをはっきり書いてございます。私は、その精神でもって職員が自分がどの組合に入るかというようなことは当然選ぶべきだし、そうしてその組合が健全な、法律で許された範囲でもって組合自身の発展なりあるいは職員の福祉の向上につとめてまいるということについては、私は最も期待している者の一人でございます。


○川俣委員 

これで終わりますけれども、一つだけ率直に。ぼくは端的に言う人間なものですから、親方日の丸だというのはやっぱり、それは無理だと思うのだが、この経営は官吏、役人じゃだめだと思うのですよ。磯崎総裁はどうこの赤字対策に対処するのだろうかと大いに注目しておるのだ。石田のじいちゃん??と言っては悪いけれども、前に総裁だった石田さんは、けんかしてまでも、おい佐藤榮作、少し予算を出せ、こういう姿勢がいまの総裁には見当たらないんだよ。しかもあなた、社会党にも国鉄出身の議員がたくさんいるでしょう、そういう人方をかりて予算をぶんどるという姿勢が総裁にはないんだ。そうでしょう。逆なんだよ。そうう体制にならないんだ。国鉄に二十年間くらいつとめたらグリーン車くらい与えたっていいよ。それを削ってみたり、そんなこそくな考え方で赤字対策なんというのはできないと思うんだ。国会議員も、挙党体制というか体制をつくる、それから総裁も裸になる、国労も一緒になる、そして、みんなあげて国鉄の赤字に対処しようという姿勢が残念ながらいまの総裁には見当たらない。親方日の丸というのは、おれだけつとめれば何とかなる、こういう姿勢じゃだめだ。石田前総裁をほめるわけじゃないのだが、ある程度はそういう政治的な感覚も必要だということを特に私は申し上げておきます。
 終わります。
○増岡委員長代理 後藤俊男君。


○後藤委員 

いままでいろいろとお話ございまして、もう時間もあと十分くらいしかございませんので……。
 どうも先ほどから総裁が言っておられることを黙って聞いておりますと、国民に対して誠意がない、企業に対して愛情がない、それはだれかというと国鉄労働組合だ、こういうふうな印象を??率直には総裁そう言われませんけれども、だから国鉄労働組合、総評というのはだめなんだぜ、先ほど川俣さんが読みましたように、テキストの中身もああいうふうなことが書いてあるわけでございますけれども、先ほどから聞かしていただいてそういうふうな感じを私受けるわけでございます。
 これが一つと、それからこれまたいろいろと赤字問題の話が出ました。中身の問題は別にしまして、国鉄としてはたいへんな時期である。これはもうおっしゃるとおりだと思うのです。それじゃこれを一体どう切り抜けていくかということが、ことし、来年、ここしばらく重大な問題として、国民は申すに及ばず、その責任者である総裁としても、いわば日夜寝られないくらいそのことが気になるだろう。この気持ちは私十分わかるわけなんです。
 そこで私の言いたいのは、先ほども出ておりました使労の関係ですね、国鉄労働組合と国鉄の当局との関係、これは私も長い間の労働運動の経験から、戦うときには大いに戦う、わかるときには大いにわかる、感情をまじえない労使の関係というのが私は非常に大切だと思うわけなんです。ところが、最近の国鉄労使の関係を、私は総裁から直接聞いたわけではございませんけれども、その辺のところがうまくいっておらぬのではないか、こういうふうな批判と申しましょうか、第三者の声をわれわれ聞くわけでございますが、この点は一体どうなんだろうか、これが二つ目でございます。
 それから三つ目の問題といたしましては、国鉄の監査報告を古いのから最近の分までずっと私読ましていただきました。昭和四十年度前後までは、上野のガード下の関係ですね、あれがやはり監査報告に触れられておりました。ところが、最近の監査報告の中身を見ますると、あのガード下の関係につきましては何ら触れられておらないように私思うわけでございます。そこでお願いしたいのは、上野付近のガード下はどういうような契約で一体どれだけの時価でだれにお貸しになっておるんだろうか、これはもうひとしく国鉄におる者はかなり気にしておる問題だと思います。
 それからその次には、交通公社、弘済会があるわけです。弘済会も国鉄関連企業の中では非常に大きい業者だと思います。交通公社もしかりだと思います。さらに、最近できつつありますところの清掃会社の問題もございます。それからまた、構内営業の関係があるわけでございますけれども、そこで私申し上げたいのは、赤字であるということはなるほどたいへんな問題でございます。だから合理化をやって人を減らしたいんだというあなた方の主張はわかるわけなんです。いい悪いは別問題にしまして、それならこれだけ大きなマンモス企業といわれる国鉄が、いま言いましたような点が一体どういうような契約でどのように貸されておるんだろうか。これは例でございますけれども、いま申し上げましたような企業にはかなり国鉄の管理者の退職された方がおつとめになっておる関連業者がたくさんあると思うのです。だから私は疑いの眼を持っているわけではございませんけれども、そういうところをもすっきりすべき時期に来ておるのではないかというふうにも私感じるわけでございますので、一番最後に申しました関連業者の契約書、さらに上野のガード下の問題、これらに対して国鉄が契約されておる内容を、委員長を通じましてぜひひとつ参考書類としてお出しをいただきますようにお願いをいたしたいと存じます。
 総括的には三点にわたってお尋ねしたわけでございますが、不当労働行為その他の問題についてはきょうは時間がございませんので、われわれのほうもかなりな資料が準備されておりますから、またしかるべき近い機会に来ていただいて、順次お尋ねすべきことはお尋ねしたい、こう考えておりますので、三点だけの御返答をお願いいたしたいと思います。


磯崎説明員 まず第一の、私が申しました国民に対する誠意と企業に対する愛情、これは私いまの組合があるとかないとかいうことを申したのではありませんで、国鉄職員として、労働組合員である前に国鉄職員、すなわち国民から月給をいただいているのですから、われわれの使用者である利用者、国民、それに対する誠意、企業に対する愛情、これは職員として持つのが当然だ。その点の教育をぜひしなければいかぬというのが第一点でございます。それから、その連中が自分の自覚と自意識のもとにどういう組合に入るか、これは法律に書いてあるとおり全く自由でございます。そこに私が干渉するというのは間違いだと思っております。したがって私はあくまでも誠意と愛情のある職員をつくるのが私の仕事だと思っております。
 第二点の労使の問題がうまくないじゃないかというお話、これはお互いに人間でございますので、ときどきぶつかったり離れたりいたしますけれども、私は、全般的にそう悪い労使状況ではないと思います。しかし、先ほど来申しましたとおり、企業全体がいま非常にあぶないときになっておりますと、とかく労使問題もやはりとがりがちでございます。私自身も感情の動物でございますので、その点がないとは申しませんが、お互いに十分話し合いましで、外から見て、何だ、その中でけんかしていては再建なんかできっこないじゃないかというようなことが言われないように、私も全力を尽くしてまいりたいと思っております。
 三点の、いろいろな付帯事業、関連事業等、時間もございませんので、これは資料で御説明いたしますが、ことしの予算をごらんくださいますと、構内営業とか関連事業から相当思い切って金を取ることにいたしております。これはいままでの倍以上のものを、大体平均いたしまして三割前後の値上げを全部いたすつもりでございますが、私は、値上げと同時に、たとえば鉄道弘済会が約十億くらいの金を一般の社会福祉事業に出しております。こういうことのよしあしということもあるいは論じなければならない時点がくるのじゃないか。厚生省関係からいうとたいへん困るとおっしゃいますけれども、とてもそこまで手が回らなければそれをこちらへもらうということなども考えなければいけないので、そういう各企業のあり方の根本的な問題をどうしてもここで考えなければいけない時期に来ているということで、こまかい問題はいずれ書面をもって委員長のほうに御報告いたすつもりでございます。
○後藤委員 では終わります。

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