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*********************桜木町事故国会審問の議事録************************
10-衆-行政監察特別委員会-8号 昭和26年05月21日
昭和二十六年五月二十一日(月曜日)
午前十一時九分開議
出席委員
委員長 篠田 弘作君
理事 島田 末信君 理事 塚原 俊郎君
理事 内藤 隆君 理事 猪俣 浩三君
理事 山口 武秀君 大泉 寛三君
岡延右エ門君 鍛冶 良作君
川本 末治君 田渕 光一君
中川 俊思君 中村 清君
福田 喜東君 柳澤 義男君
石田 一松君 椎熊 三郎君
藤田 義光君 久保田鶴松君
横田甚太郎君
委員外の出席者
証 人
(国電蒲田電車区運転士) 中村 嘩君
証 人
(国電東神奈川車掌区車掌) 大矢 治雄君
証 人
(国電電気工手長) 中澤 重ニ君
証 人
(国電桜木町駅信号手) 高原 豊秋君
―――――――――――――
五月二十一日
委員梨木作次郎君辞任につき、その補欠として
横田甚太君が議長の指名で委員に選任された。
―――――――――――――
本日の会議に付した事件
桜木町駅国電事故に関する件
証人出頭要求に関する件
―――――――――――――
○篠田委員長 これより会議を開きます。
この際お諮りいたします。先般来桜木町駅国電事故に関する件につきまして、事務局に基礎調査を命じておつたのでありますが、一応の調査を終了いたしましたので、この際桜木町駅国電事故に関する件について、委員会において本調査に着手いたしたいと存じますが御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○篠田委員長 御異議なきものと認めます。それでは調査することに決定いたします。
―――――――――――――
○篠田委員長 なお本件につきましては、理事諸君の御了承を得まして、本日は国電運転士中村嘩君、国電車掌大屋治雄君、電気工手長中澤重二君、駅信号手高原豊秋君、二十二日に横浜地検検事大津廣吉君、横浜市警捜査第一課長高橋一夫君、横浜市警鑑識係井出光正君、乗客平田善夫君、二十三日に東京鉄道局管理局長白木龍夫君、日本国有鉄道運輸総局長小西桂太郎君、運輸省鉄道監督局長足羽則之君、日本国有鉄道総裁加賀山之雄君、以上十二名の諸君にそれぞれ本委員会に、出頭を求める手続をいたしておりますが、以上の諸君を本委員会の証人として決定いたすことに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○篠田委員長 御異議なきものと認めます。それでは証人として決定いたします。
―――――――――――――
○篠田委員長 それではこれより桜木町国電事故に関する件につき調査を進めます。証人に証言を求めることにいたします。ただいまお見えになつている方は中村嘩さんですね。
○中村証人 はい。
○篠田委員長 これより桜木町国電事故に関する件につきまして証言を求めることになりますが、証言を求める前に証人に一言申し上げます。昭和二十二年法律第二百二十五号議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律によりまして、証人に証言を求める場合には、その前に宣誓をさせなければならぬことと相なつております。
宣誓または証言を拒むことのできるのは、証言が証人または証人の配偶者、四親等内の血族もしくは三親等内の姻族または証人とこれらの親族関係のあつた者及び証人の後見人または証人の後見を受ける者の刑事上の訴追または処罰を招くおそれのある事項に関するとき、またはこれらの者の恥辱に帰すべき事項に関するとき、及び医師、歯科医師、薬剤師、薬種商、産婆、弁護士、弁理士、弁護人、公証人、宗教または祷祀の職にある者またはこれらの職にあつた者がその職務上知つた事実であつて、黙秘すべきものについて尋問を受けたときに限られておりまして、それ以外には証言を拒むことはできないことになつております。しかして証人が正当の理由がなくて宣誓または証言を拒んだときは、一年以下の禁錮または一万円以下の罰金に処せられかつ宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは、三月以上十年以下の懲役に処せられることとなつておるのであります。一応このことを御承知になつておいていただきたいと思います。
では法律の定めるところによりまして証人に宣誓を求めます。御起立を願います。
宣誓書の朗読を願います。
〔証人中村嘩君朗読〕
宣誓書
良心に従つて、真実を述べ、何事もかくさず、又何事もつけ加えないことを誓います。
○篠田委員長 では宣誓書に署名捺印を願います。
〔証人宣誓書に署名捺印〕
○篠田委員長 これより証言を求めることになりますが、証言は、証言を求められた範囲を越えないこと、また御発言の際は事務の整理上その都度委員長の許可を得てなされるようお願いいたします。なお、こちらから質問をしておりますときはおかけになつていてけつこうですが、お答えの際は御起立を願います。
証人の略歴について述べてください。
○中村証人 大正八年二月十日、東京都大田区御園二丁目三十九番地に生れました。現住所、本籍地は現在のままです。大正十四年四月、東京都大田区矢口小学校に入学しました。それから昭和六年三月、東京都大田区矢口東小学校を卒業しました。昭和十一年三月、攻玉社中学校を卒業しました。昭和十二年六月二十八日、東京鉄道局品川電車区勤務。十三年十一月一日、蒲田電車区車両手を命ぜられまして蒲田電車区に転勤しました。十四年四月一日蒲田電車区電車運転手になりました。十四年七月一日、東京鉄道局教習所勤務を命ぜられまして教習所に入所いたしました。十四年十月三十一日、同教習所電車運転手科を修了いたしました。十五年二月一日、静岡県浜松市の高射砲第一連隊入営、同年十二月二十五日、高射砲第十七連隊転属。昭和十七年十二月十日再び高射砲第一連隊に転属のため満鮮国境通過。
○篠田委員長 こまかいことはいい、略歴だから、いつ小学校を出て、何年から何年まで軍隊にいたということでいい。
○中村証人 同年十二月二十日現役満期除隊。それより鉄道へまた服務を命ぜられまして、昭和十八年三月二十九日、東京鉄道局蒲田電車区電車運転手を命ぜられました。十八年十月五日、臨時召集。
○篠田委員長 それから何年まで軍隊にいたか。
○中村証人 二十一年七月二日召集解除。それ以後電車運転手を引続いてやつております。
○篠田委員長 あなたは電車運転手として、教習所なりあるいはあなたの働いておる現場なりで、どういう教育を受けまたどういう実務をやつたか簡単に述べてください。
○中村証人 教育は車両手見習、教習所を出てから運転手見習として、その間電車運転手として必要な事項の教育を受けました。
○篠田委員長 何か事故が起つた場合の教育を受けておりますか。
○中村証人 受けております。
○篠田委員長 どういうふうに受けておるか。
○中村証人 事故が起つた場合、月に大体二回くらい電車区として応急処置の訓練をいたします。
○篠田委員長 どういう応急処置。
○中村証人 車が故障になつたときどういうふうにするかというおもに故障方面だけであります。
○篠田委員長 今度のようなこういう事件に対する訓練とかあるいは教育というものは受けておられなかつた。
○中村証人 おりません。
○篠田委員長 一ぺんもない。
○中村証人 今度のような事件というのはありません。
○篠田委員長 どういう事件ですか。
○中村証人 主回線の地気というような場合は、すぐパンタグラフを降下するとか、そういうような教育です。
○篠田委員長 電車の中に火事が起つたというような場合の教育は受けなかつたか。
○中村証人 別にこれというものはやつておりません。
○篠田委員長 電車の中に何か大きな事故が起つたときに、どういうふうにして乗客を救済するかというふうなことは、今まで訓練をしたり演習をしたりしたことはなかつたか。
○中村証人 ありません。
○篠田委員長 今回の事故が発生したそのいきさつをひとつ述べてください。
○中村証人 今回の事故の起つたいきさつは、まあ結局……。
○篠田委員長 君がいつ運転して出て行つたところが、どういう状態だとか、その状況からまず述べてください。
○中村証人 横浜を大体九分か十分遅で出発いたしました。
○篠田委員長 十分遅れだね。
○中村証人 はい、そこははつきりいたしません。それで場内信号機の確認喚呼位置という標があります。その標で場内信号機を確認するわけでありますが、そのときに二番線に注意信号現示を出しておりました。そのことは結局二番線へ入つてよろしいという信号であります。
○篠田委員長 二番線というのは下り線だね。
○中村証人 桜木町の山側の線です。それで確認喚呼位置の標で、場内信号機の反対の鉄塔付近に架線工事をやつているらしいように思われた人が二、三人―人数ははつきりいたしませんが二、三人見えました。場内信号機というのは運転手にとつて絶対信号機で、絶対によく注意しなければならない義務があるのです。それで自分といたしましては、場内信号機をずつと確認しながら進んで行つたわけです。場内信号機を通過するときでありました。そのときに架線が幾らかたるんでいたのは自分でも見えました。架線がたるんでいるということは架線工事があつて、そのために幾らかたるんでいるんだろうと自分は思つていました。そのとき別にその工事している者が手信号なり防護措置はしなかつた。それから場内信号機はもちろん二番線注意の場内信号現示である。自分といたしましても、絶対大丈夫だろうと思つて入つて行きました。それで自分は渡り線を渡るときに、架線の状態を一応確認いたしました。確認をいたしまして、それであとは、今度は転轍の開通状態、それを運転手として見る義務がありますからずつと転轍の状態を見ながら通つて行きました。結局上り線でありますが、上り線に入らんとするときに、大きな雷のような火花が出て、それでこれはたいへんだと思つて、すぐ非常制動をかけて電車をとめて、それと同時にパンタグラフを降下したのであります。それでそのときにパンタグラフを降下しても依然として火花が出ているのであります。それから目分としてもいつまでたつても消火できない。普通ならパンタグラフを降下すれば消えるわけなんでありますが、一向に火花が出て消火しないわけであります。
○篠田委員長 火花はどこから出ている。
○中村証人 屋根であります。これはもうパンタグラフがひつかかつたものと思つてひよつと後を振り向いたわけであります。そうしたら天井から猛烈に火がふいている。表を見ようと思つても、表は火の粉がばらばら降つて来て、とうてい顏も出せない状態。すぐ中の乗客を出さねばならぬとそのときに思いました。それでまたドアをあける手配をしなければならないと思つて、またパンタグラフ上昇用のひもがありますが、そのひもでもつてパンを上げたのでありますが、結局パンタグラフがひつかかつて中腰のような状態で、その点はつきりわかりません。それでパンタグラフを上げる電磁弁を扱つたかどうかわかりません。それですぐ車掌スイッチをあけたかと思います。あけると同時にドラムスイッチ、それはどつちが前後したかはつきりわかりません。
○篠田委員長 それはあがつていたわけだな、君が。
○中村証人 はあ。とにかく操作をやつたように覚えております。
○篠田委員長 (略図の前に行き、示しつつ)そうすると、ここの線を直したんでしよう。
○中村証人 はい。
○篠田委員長 あなたは、これから入つて来たんでしよう。
○中村証人 入つて来ました。
○篠田委員長 ごのとき、ここで直した連中は信号も何もしなかつたか。
○中村証人 全然やつていません。
○篠田委員長 信号機を認めて入つてもいいと思つて入つて来た。
○中村証人 はい。
○篠田委員長 そのときに架線がたるんでいたというのはここの架線でしよう。
○中村証人 いや、そこではありません。もつとずつと手前であります。
○篠田委員長 それじや、たるんでいた架線は通過しちやつたの。
○中村証人 いえ、自分の線は全然異状はありません。
○篠田委員長 だけれども、たるんでいる架線にパンタグラフを引つかけたんじやないの。
○中村証人 そうであります。
○篠田委員長 だから、あなたが入つて来るときに、ここにたるんでいる架線を見ていたわけでしよう。
○中村証人 そこの架線はわからなかつた。
○篠田委員長 こつちの架線の下るのを見ていたわけだね。ここはわからなかつたわけだね。
○中村証人 そこはわかりません。見通したところが何ともないと思つた。
続く
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解説は、下記blog参照
桜木町事故に関する国会審問の議事録 第1回
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