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関西本線にキハ35形が導入される契機となった、国鉄監査報告書(昭和34年)

昭和36年、関西本線に日本初の通勤形気動車(キハ35形)が導入されますが、その契機となった、国鉄監査報告書の内容を全文掲載します。

この項目では、下記のとおり、関西線の改善についてかなり詳細かつ具体的に示されており、この監査報告に基づき、国鉄はキハ35形気動車を導入されることとなりました。

奈良駅にて、キハ35系気動車による運転開始

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参照:国鉄監査報告書 昭和34年 

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主要赤字線区の経営改善について

(写)

監委事第15号
昭和35年8月17日

日本国有鉄道総裁

    十河信二殿

日本国有鉄道
監査委員会委員長
石田礼助

主要赤字線区の経営改善について (通知) 

国鉄における主要赤字線区の経営改善について、 監査した結果、別紙のとおり監査委員会の所見を決定しましたから通知いたします。

主要赤字線区の経営改善について

国鉄の線区別経営改善は、従来主として比較的閑散な親区を対象として行われ、 相当の成果をあげておりますが、 主要線区については、 線区別に経営長を置いて検討を進めることになっておりますけれども、いまだ成果をあげる段階にはいたっておりません。
昭和33年 度における主要赤字線区30線区の赤字額は、総計186億円に達し、 また、山陰、 関西、 奥羽、函館、日豊及び信越の6線区はいずれ も 10億円以上の巨額の赤宇を生じております。従って、 国鉄の経営改善を進めるためには、 これら巨額の赤字を生じている主要線区について徹底的に経営内容の検討を行い、 赤字の減少につとめることが最も効果的であり重要なことであります。

 よって、監査委員会は、モデルケースとして関西線をえらび、 支社および管理局作成の各種資料にもとづいて調査するとともに実地についても監査いたしましたが、関西線についてはもとより、主要赤字線区全般の経営改善についての問題として次の所見を申し述べたいと存じます。

  1.   まず原価の積極的計画的切下げをはかることが肝要であります。 例えば車両キロあたりあるいは営業キ ロあたりの原価を各項目について分析検討し、その根源を究明して対策を講ずることが必要であり、 特に一般的に人件費、減価償却費の高いことは注目すべきであります。原価低減の方策としては、輸送方式の合理化、要員の配置、運用の合理化t輸送設備及び業務機関の整理統合等について真剣な検討が必要で、あります。

  2.    主要線区の経営を改善するためには、サーピスを向上し収入を増加するため、長期にわたる投資計画を樹てその効果によって経営改善を期待することは当然必要なことであります。しかしながら、これら長期計画を直ちに実現することは種々困難もあることでありますから、 段階を分けて実施計画を考えることが必要であります。例えば、 現有設備の転活用、要すれば、 若干の投資を加えることによ り当面早期に効果をあげるよう工夫 し経営改善への寄与について真剣に検討することが特に緊要であると考えます。

  3.   投資計画の樹立にあたっては、基本である客貨の需要要請に対し、できるだけ多くの資 料を収集 し、 十分な調査を行いマーケットリサーチ等の科学的方法により、 状況判断、将来の予測等を行って策定することが肝要であります。こうすることが投資効果を確保し、 状勢の変化に直ちに対応しうる方途であると考えます。

  4.  さらに一貫した経営改善計画を策定するために、例えば関西線の ように2支社以上にまたがる線区については、関係支社間の密接な連けいが必要で、そのために合同委員会の設置を試み、場合によっては、本社が調整推進に当る等の措置も必要であります。


 おって、関西線実地監査の際論議された問題点のうち、特に注目すべき点は、次のとおりであります。


  1. 奈良~湊町間の気動車化について具体的計画を樹て、これと電車化との経済比較を慎重に行うこと。
  2. 経営改善のための投資は、最少の投資によって効果を収めるよう、 極力緊要なもののみに限ること。
  3. 南大阪地区貨物駅の百済駅への集約と関連し、都心旅客専用駅としての湊町駅の活用、要すれば、将来大阪駅との直通について検討すること。
  4. 紀勢線の全通にともなう定期外旅客の急激な増勢にかんがみ、これに対応できるよう輸送力を整備し、また、地元の受入体制についても十分意を用いること。
  5. 将来東海道新幹線及び名神高速道路が完成し た場合、名古屋 ・ 大阪間の輸送について、関西線のもつべき使命を明確にしておくこと。
  6. 竜華撮車場等のように他線区の作業を併せ行っているものについて、原価負担の適正化をはかること。

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