○篠田委員長 それであなたは発火すると同時に、今言つたようにパンタグラフをまず下げた。そうしてみたところが火花がなかなかおさまらないので、うしろを見たところが燃えておる。そこでこれはいけないと思つてドアをあけるために、またパンタグラフを上げてスイツチを押したけれども、パンタグラフが途中でひつかかつたかどうかしてあかなかつた。
○中村証人 スイッチでなくてひもであります。
○篠田委員長 ひもを引いたところがあかなかつた。そこで自分は外へ飛び出して、うしろのドアをあけなかつたわけですね。運転手の部屋と客室とのドアをあけないで飛び出したのだが、それに間違いないですね。
○中村証人 間違いありません。
○篠田委員長 そのときに――あとの祭りだが、ドアをあけるのに気がつかなかつたのだね。
○中村証人 あけてもだめだと思いました。そこのところははつきりわかりませんけれども……。とにかく自分としては瞬間的に中に入れないと思つたので、うしろからまわつてあけようと思つたのです。
○篠田委員長 逃げるつもりではないのだね。
○中村証人 そういうわけではありません。
○篠田委員長 車掌がスイッチを扱つたけれどもドアがあかなかつたというのは、証人が切りかえスイッチを切つたためだというのだが……。
○中村証人 それはどういうわけですか。切りかえスイッチを切つても電源があればあきます。
○篠田委員長 それはパンタグラフが下つてしまつているから、電源がないからあかないというわけかね。
○中村証人 そうです。
○篠田委員長 シヨートして電車が燃えておつても、電流はまだ通じておつたのではないかね。
○中村証人 通じておりました。
○篠田委員長 電車の方には電流は通じておつたけれども、スイツチの方には電流は通じてなかつたというわけですか。
○中村証人 それは技術的な問題になります。
○篠田委員長 片方はどんどん燃えておるが、電流は通じていたわけですね。
○中村証人 シヨートしておると、そこでもつて電圧というものは、ほとんどゼロに近い程度になつてしまいます。
○篠田委員長 自然に燃えているわけだね。
○中村証人 自然でありません。
○篠田委員長 どんどん電流が入つて来たのじやないか。
○中村証人 入つて来ております。
○篠田委員長 言いかえれば電車の方は電流が入つておるのだね。
○中村証人 電車の方じやありません。
○篠田委員長 どういうわけで。
○中村証人 結局アースしてしまうわけです。
○篠田委員長 アースしてしまえば、電車が燃えないわけじやないのですか。そうじやないのですか。
○中村証人 最初の……。
○篠田委員長 だから電車を通じてアースしているわけか。
○中村証人 アースでありますが、どういうぐあいにアースしたか自分としてもちよつとわかりません。
○篠田委員長 結局電車を一つのあれとして通じているわけでしよう。電車を通じて燃えているわけでしよう。
○中村証人 はい。
○篠田委員長 その電流はあなたの開こうとするスイッチの方には来なかつたというのですね。
○中村証人 自分の言うことですか。
○篠田委員長 スイツチのところへ電流が来ていればあなたがボタンを押してもあくわけでしよう。
○中村証人 そうであります。
○篠田委員長 それがあかないというのは、あなたの押そうとするスイッチの方には来てない、しかし燃えている電車の方には電流は依然として行つていた、こういうことでしよう。
○中村証人 そうであります。
○篠田委員長 あなたがうしろへまわつて行つたときに、うしろの窓からお客が出ようとしていたわけでしよう。
○中村証人 そうであります。
○篠田委員長 それを何人かひつぱり出したか。
○中村証人 ひつぱり出しました。
○篠田委員長 何人くらい。
○中村証人 自分が連結器に上つたときに、そのときに一両日から二両目へ出て来たのであります。
○篠田委員長 うしろのドアからガラスか何か破つて出ようとしているわけか。
○中村証人 そのときに、自分としてもはつきり記憶がないのであります。
○篠田委員長 ドアはあいていないんごしよう。
○中村証人 結局窓のところです。
○篠田委員長 窓を破つて出て来ようとしたのかね。
○中村証人 はい、それをひつぱり出したのです。
○篠田委員長 何人くらいひつぱり出した。
○中村証人 自分としてもはつきりわかりませんけれども、四、五人くらいと思つているのです。
○篠田委員長 あとはどうしてやめたのか。
○中村証人 結局火災がどんどんうしろへ来てしまつて……。
○篠田委員長 うしろへ来てしまつて……。
○中村証人 連結器まで来てしまつたからです。中が結局煙と火とでわからないのです。
**********************桜木町事故国会審問の議事録***********************
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