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第46回国会 衆議院 運輸委員会 第5号 昭和39年2月7日 日本鉄道建設公団法案に対する質疑

以下は、国鉄総裁と田中議員の質疑の部分を抜粋したものであります。

石田総裁が率直に、国会に対しても正々堂々とお話をしているのが大変印象的です。

参考 国会会議録検索システム

059 川野芳滿

○川野委員長 それでは、日本鉄道建設公団法案に対する質疑を行ないます。田中織之進君。

060 田中織之進

○田中(織)委員 きょうは建設公団法の問題についての締めくくりという意味で、まだ質問者もあろうかと思いますけれども、伺いたいと思います。
 先ほどもちょっと申し上げましたように、昨年の通常国会で本会議において説明がなされましたときに、私、社会党を代表して質問をいたしておりますし、衆議院の運輸委員会としてはいわば二回目でございますので、できるだけ重複を避ける意味で数日来通常国会の速記録もおよそ目を通したので、できるだけダブる点は避けたいと思いますけれども、勢い、締めくくりで念を押すような点も出てくるかと思いますけれども、その点はお許しいただきたいと思うのであります。国鉄総裁もお見えになっておりますので、総裁からもお答えを願いたいと思います。
 けさの新聞によりますと、三十九年度の予算編成のときに、運輸大臣とのお約束によるところの政府自民党との国鉄問題の調査会をできるだけ早く発足させろということを、きのう官房長官に総裁みずから申し出られたような記事を拝見いたしたのであります。池田内閣の経済政策の重点として、所得倍増計画を推進してまいっておるのでありますが、どうもこの委員会の審議の過程を通じまして、倍増計画もすでに三十六年からいたしますと今年が四年目になるわけでございますが、特別に非常に伸びたところがある反面、予定どおり伸びない部分が出てまいっております。ことに地方格差はますます増大する傾向にあると思うのでありますが、その点から、新線建設公団の設立が急がれているという点は、そういう格差是正、経済基盤の強化の二点にねらいをつけておるわけでございますが、率直に言って、倍増計画そのものの中における交通政策、そういう問題はちょっと弱かったのではないか。道路、鉄道、港湾の三つが交通力の三つの柱であります。道路の点につきましては、大蔵省と建設大臣との間の意見の隔たりはありましたけれども、大体四兆一千億で道路整備を予定どおり進めるという大まかな計画もきまったようでありますが、運輸省関係の港湾と国鉄に関する問題が、まだそういう投資額の総額も最終的になかなかきまらない、こういうような状況にあるので、私は、勢いきょうの質問をそれに重点を置いて伺いたいと思うのであります。
 まず国鉄総裁に伺いますけれども、所得倍増計画では、国鉄に対する三十六年以後四十五年までの投資総額というものを一応二兆一千億ということに踏まえておるわけなんです。そのうちで線路の補修強化というような関係には七千億を予定しておるということなんですが、現在までの状況から見て、この二兆一千億という全体のワクそのものが、私はやはり小さ過ぎるんじゃないかという感じを持っておる上に、現実にやはりこの二兆一千億という国鉄関係への投資というものの進行状況を見ますと、なかなか四十五年までに二兆一千億というものを達成するということは至難じゃないか、こういうふうに見るのでありますが、総裁は、十河さんのあとを引き受けられて就任をせられてから、特に国鉄の機能強化、輸送力の増強という点に格段の努力をされてまいっておるわけであります。今度新線建設の関係は、公団に移るということになったので、もっぱら改良関係あるいは複線化、複々線化というような点に総裁としては力を入れて、三十九年度においても所要資金を要求しましたけれども、私は目的を達しておらないと思うわけです。そういう点から運輸大臣との間の約束による、国鉄問題を新しい時限に立って再検討するための調査会といいますか、そういうものを早急に開いて、そういう点についての見通しをつけてもらいたい、こういうことがきのうの官房長官への申し入れになったのだと、このように理解するのでありますが、総裁に就任されまして、やがてかれこれ一年にもなろうとするわけでありますが、その間国鉄総裁になられましてから、倍増計画との関係で、国鉄をあずかっておられる立場で、政府の国鉄に対する取り組みについては、総裁としての希望もお持ちだろうと思いますけれども、そういうような点について、まず御所信を承りたいと思います。

061 石田礼助

○石田説明員 お答えいたします。
 御承知のとおり、国鉄は戦時におきましてだいぶ打ちこわされた。戦後においての修理というものも、ようやくほんとうに真剣にかかったのは昭和三十二年からです。それまでというものは、ほんとうの寡少資本の投資によって十分の修理もやらなければ、また輸送力を増強することもやらぬ。一方に経済というものはしんしんとして発展いたしまして、輸送需要というものは非常にふえてきたというようなことで、第一次五ヵ年計画では主として修理の問題、輸送力の増強というものもありますが、これはきわめてわずかなものです。それをやっておるうちに、とてももう追っつけないというようなことで、途中で第二次五ヵ年計画というものを立てまして、それが四十年に完成すると、そこにおいて輸送力の増強というものも相当にやるということになったのでありますが、いろいろの財政上の都合で三十八年度までには六割を完成しなければならぬのがようやく四割しか完成しない。そこで、こんなことではとても国鉄としては輸送使命を遂行することはできぬ。一方に世界にも珍しい過密ダイヤのもとに運転している。したがって、あやまって事故でも起こるというと、連鎖反応によって大きな事故になる。ここにおいて何とかひとつやらなければならぬということで、私は国鉄総裁として総理大臣に対して第二次五ヵ年計画はあと三十九年と四十年の二年しかないのだから、その間に残りの六割をぜひ完成するようにしたいので、予算をぜひ考えてもらいたい、こういうことでお願いしたのでありますが、御承知のとおり財政投融資その他において千億ばかり打ち切られた。三拝九拝の後、ようやく債務負担というような、ことしには金の使えない、来年になってようやく金の使えるようなもので四百億円、そのほかに百億円というようなことで、頭をなでられたわけです。とてもこんなことでは国鉄としての使命を尽くすことはできぬ。この改善策を一体どこにわれわれは求めるか、こういう問題であります。
 そこで、私の考えついたことは、これまでの国鉄の五ヵ年計画といい、何といい、すべてこれは国鉄だけの計画なんです。そうしてその計画の内容は予算を要求するときに至って初めてわかるのです。ほんとうに一般の人に了解されておらぬ。ここにわれわれのやり方についての過失がある。だから国鉄の輸送の状況というものは所得倍増計画にも関連する重大問題であるがゆえに、国鉄のいまの計画でなくて、政府の計画ということにしてもらいたいという意味におきまして、これに対しては、国鉄ばかりでなくて、特別の、大蔵省、通産省、それから国会議員その他の方々に入っていただいて、政府の案として計画を立てるように、そういう意味からして委員会をひとつ設置していただきたい、こういうことで、これはずっと前に申し入れたのであります。実はただいまのお話の、昨日官房長官に会ったというのは、私は催促した。これは早くやらぬと、四十年の予算の間に合いませんので、できるだけ早くそういう委員会をつくってやってもらいたいということをお願いした次第であります。

062 田中織之進

○田中(織)委員 そこで総裁に伺います。きのう官房長官に督促に行かれたわけですが、官房長官の御意向はいかがですか。
 それから総裁のいまの御答弁を伺っておりますと、私ども賛成でありますけれども、けさの新聞によりますと、政府、与党??政府ということになりますと、勢い大蔵省も経済企画庁も入るわけでありますが、与党との関係で、この国鉄問題を国の政策として取り上げるための調査委員会というか、そういうような構想のようでありますけれども、総裁のいまのお言葉を聞いておりますと、国会議員の諸君もというようなことでありますが、私ども少数野党ではありますけれども、やはり国会の三分の一近い勢力を持っておるので、政党内閣でありますけれども、政府与党だけで、現在こういうような状態に置かれておるということも、自民党の政府が長く続いておる過程で一つ出てきた欠陥ではないかと私は思うので、その点はお考え直しを願わなければならぬのではないかと思うのでありますが、まず官房長官に督促に行かれたとき、官房長官から総裁の満足のいかれるような御回答があったのでしょうか。

063 石田礼助

○石田説明員 お答えいたします。この問題は、私は、官房長官として決定せらるべき問題ではなくて、総理大臣として決定せらるべき問題だと思います。官房長官からはイエスとかノーとかいうことは申されませんで、総理大臣にもよくその趣旨のことをお伝えしておきます。こういうことでありました。
 それから社会党の諸君をどうとかこうとかいうことでありますが、私としては、別に社会党の国会議員を排してどうとかいうようなことの要望は絶対にしておりません。

064 田中織之進

 ○田中(織)委員 どうも予算編成の過程においてもいろいろの問題があると思う。総裁が申されたような立場で、国鉄の輸送力の増強という問題を、国の新しい方針として位置づけて、端的に言えば、それにいかに財政資金を投入するかということに帰着すると思うので、その点は、特に運輸大臣もおられるわけでありますから、あなたが国鉄総裁との間でそういう新しい機関をつくって、新しい気持ちで国鉄の問題に取り組もうということで約束されたのでありますから、総理に特にそういう機関の一日も早く発足できるように、私は運輸大臣の御努力を要請したいと思う。
 そこで国鉄総裁に次の質問を申し上げますが、第二次五ヵ年計画は、三十九年度、四十年度、二年間残っております。しかし残っておる部分のほうが、後半の二年に六割という、半分以上も残っておるという関係がありますので、第二次五ヵ年計画は三十九年で一応打ち切って、四十年からは第三次五ヵ年計画という形で、新しい構想で進めたらどうかという御意見を持っておられるように予算折衝の過程の総裁の談話で承知したのでありますが、その点はいかがですか。

065 石田礼助

○石田説明員 ただいまの御意見のとおりであります。もう第二次五ヵ年計画は三十九年で打ち切る、そして四十年から第三次五ヵ年計画に着手する、こういう考えであります。

066 田中織之進

○田中(織)委員 そこで総裁に、これはだめ押しの質問になろうかと思いますけれども、総裁の持っておられる国鉄の輸送力強化の重要な部分になります新線建設の関係は、総裁が就任される以前に、鉄道建設審議会の答申もありまして、昨年の通常国会にこの公団法が提出されたというようないきさつがあるわけです。そういう事態の進行の後に総裁に就任せられたのでありますが、国鉄自体の立場から見て、新線建設はやはり国鉄自体でやられるよりは、この種の公団でやられるほうがいいというお考えですか。それとも、まあそういうことに進んでおるならやむを得ないというような意味の考え方でございますか。この点を伺いたいと思うのであります。

067 石田礼助

○石田説明員 忌憚なく申し上げれば、新線の建設を国鉄から取られるということは、われわれ国鉄人から見れば自分の領土をとられるというような気持ちですね。あまりいい気持ちはしないが、結局事ここに至った原因というものは私は国鉄にあると思う。要するに落ちつくところに落ちついたということで、実はあきらめている。どうしてこういうことになったか、こういうことを申し上げると、われわれ国鉄としては幹線の輸送増力ということに一生懸命なんです。その結果、新線の建設というものに対しては、決してずるけておるわけではありません。ありませんが、どうもやはり新線建設を希望せられる方から見れば、つまり国鉄の新線建設に注いでいる力というものはどうも少し鈍い、こういうことに見られるのは、これは私は人情だと思うのです。そういうことで今日のように新線建設を国鉄にまかしておった日にはだめだ、こういうことに見られたということも、これは人情としてやむを得なかったと思う。別にわれわれがなまけておるわけではないが、どうしてもそう見られる。それじゃ将来はどうか、こういうことになると、国鉄としてはやはり幹線の輸送増力というものに対して全力を尽くしてやらなければいかぬ。そうせぬことにはいつまでたっても過密ダイヤというものの解消はできぬ。大きな事故の危険というものが依然として存在する。このほうに全力を尽くさなければならぬということのために、やはり新線の建設というものに対するわれわれの力の注ぎ方が、十分やっておるつもりでもどうもやはり新線建設の希望者から見れば御満足のいかぬようなことになるのではないか、ここにおいてか新線建設公団というものができた、どうもこれはしかたがない、身から出たさびだということであきらめております。

068 田中織之進

○田中(織)委員 総裁の率直な御答弁で、私もそれ以上伺いません。いま言われましたうちで、幹線の輸送力増強は、国鉄としてぜひ、特に過密ダイヤ解消の点から見てもやらなければならぬということであります。東海道新幹線が予定どおりいけば十月一日から開業できる方向へ向いておるわけですが、それに引き続いて、これもこの委員会で他の同僚諸君からたびたび質問が出るわけでありますが、山陽線の新線建設の問題が、幹線ということから当然日程にのぼると思うのであります。それについて、これも新線になりますから建設公団に移すか、東海道新幹線と同じように国鉄でやるか、こういう点について質問が出るわけですが、総裁としては、東海道新幹線の次に続いて予定される山陽線の新線建設は、これはやはり幹線として国鉄でやっていかれようというお考えでありますかどうか。特に今度建設公団ができまして、国鉄の新線建設の部分の職員等はそのまま引き継がれるわけでありまして、東海道新幹線に関する建設要員というものはそのまま国鉄に残るわけなんで、東海道新幹線が完成したあと、それらの職員が一体公団へ移るのかあるいは引き続き国鉄に山陽線の関係等で残るのか、この点は関係職員も不安に思っておる点だと思うのであります。その点は、総裁のお考えはそういう幹線建設はやはり国鉄としてやっていくというお考えでありましょうか。これはお気持ちの問題を伺うようなことになると思うのですが、先ほどの御答弁のように率直にひとつお聞かせを願いたいと思います。


069 石田礼助

○石田説明員 この山陽線の新設ということにつきましては、まだあそこには輸送力の余裕も相当にありますから、多少の調査はやっておりますが、ほんとうに真剣にこれを建設するということの研究はまだやっておりません。それで、これを新線としてみなすか、国鉄としての幹線としてみなすかということについては、これは私は常識からいえばやっぱり国鉄の幹線ということに考えるのがあたりまえじゃないかと考えておりますが、この問題はあるいは将来問題になりましょうと思いますが、常識上からいえばこれはもう私は問題ないと思う。
 それからして新線建設に関する人の問題でありますが、東海道新幹線のほうは落成する、したがってそのほうの人間があいてくる。それをそのまま新線に移すということは考えておりません。これは国鉄全体から考えまして、新線建設のほうに対しては適当な人をひとつ選定してやる、こういうことに考えておる次第であります。


070 田中織之進

○田中(織)委員 これも総裁の率直なお気持ちを伺ってはっきりしたわけでありますが、山陽線の問題について調査を進めておるということで、すでに、たとえば予定の用地の買い占めに先走りをする、こういうような動きもあるやに聞いておるのであります。東海道新幹線の建設費が二回にわたって補正を組まなければ完成しない。これはもちろん初めての年限を限っての工事でありますから、当初の予算のどおりにいかなかったという事情はわかるにしても、用地の買収等にあたってとかくの黒い影をさしておる関係がありますので、総裁も慎重にお答えになっておるのだと思うのでありますが、この点は私一番最初に申し上げましたように、やはり国の経済の発展の関係から見て、全国的な観点から見て、鉄道の輸送網というものをどう整備し強化していくか、こういう観点に立ってやり、そういう弊害等の起こらない配慮は必要でありますけれども、調査はできるだけ早く進めて結論を出していただきたいことを希望しておきたいと思います。
 そこで経済企画庁に伺いますが、私冒頭に申し上げ、総裁に要望として指摘した関係の問題でありますけれども、所得倍増計画の中に、いわゆる交通運輸の基盤強化という点で交通関係の小委員会が取り上げた方針が示されておるのであります。これはいろいろな意味において問題がある。まあ倍増計画そのものが私どもからいえばやはりひずみがすでに出てきている。だからこれは当初に欠陥があったのだと私は思うのであります。ところがそれは進行過程にできたいわば欠点、病気で、最近はその意味でアフターケアだというような医学の用語まで出して、実質的には手直しの段階へ入ってきておるように思うのでありますが、経済企画庁としては倍増計画の進行過程から見て、当初の??これは国鉄のみならず港湾関係あるいは道路の関係をひっくるめまして、交通関係ということになりますと、倍増計画では通信関係、航空関係も含まれておるわけでありますけれども、特に陸海の輸送力増強という観点から見てこの倍増計画の当初に策定した構想ではたして最後まで押し切れるとお考えになっているのかどうか、その点を伺いたいと思うのであります。

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