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国鉄に対する市町村納付金の減免について 監査報告書から抜粋 「昭和41年監査報告書」

国鉄に対する市町村納付金の減免について

 

監  委  事  第 5 8 号
昭和 41 年 1 0 月 20 日

 

運 輸 大 臣
藤 枝 泉 介 般

日本国有鉄道監査委員会委員長  
岡  野  保  次  郎 

国鉄に対する市 町村納付金の減免について

今回、 市 町村納付金について監査を実施した結果、特に政府の御配慮が必要と考えますの で、 日本国有鉄道法第14条第4項に基づき、監査委員会の意見を別紙のとおり具申いたしま す。

別 紙

国鉄に対する市町村納付金の減免について

国鉄は、昭和28年度から非事業用固定資産に対して固定資産税を賦課され、ま た、昭和31 年度から事業用固定資産に対して市町村納付金の納付を義務づけられてきた。昭和40年度に おける納付額は、固定資産税8億円、市町村納付金94億円、計102億円で、制度設定以来昭和40年度までの両者の累計額は826億円に及んでいる 。国鉄の事業は、本来国の事業であ るため、地方税法上、事業用固定資産については非課税とされているが、極度にひっ迫した地方財政の窮状を打開するための一つの措置として、国および地方公共団体の市町村交付金制度と並んで、国鉄等公社の市町村納付金制度が設けられたものである。私鉄等の重要産業施設についても公共的見地から各種の減免措置が講じられている。したがって、国鉄の負担す る 市町村納付金は 、 国営事業、 公団等政府関係機関の事業に比し著しく負担の公平を欠くものといわざるを得ない 。
昭和40年度における固定資産税の総収納額は2700億円と見込まれ、これに対し国鉄の税負担は102億円となっている。このような税負担は、その実績からみると国鉄が圏内総固定資産の約l割を有しているということになり、固定資産保有の実態とは全くかけ離れたも のであると考えられる。
(2) 今後、第3次長期計画の進展による固定資産の増大に伴い、国鉄の市町村納付金およ び固定資産税は急激に増加し、第3次長期計画の期間中における負担は1000億円にも及ぶ 見 込みである。このような負担の急激な増加は、国鉄財政 にますます大きな 影響 を 及 ぼす も の と 考 え られ る 。
国鉄は、昭和40年度を初年度として第3次長期 計 画 の 実 施 に は い っ たが、この計画は国の施策として認められたものであ、本計画の実施 国鉄に課せ ら れ た 緊急かつ不可欠な責務であって、これに要する資金は3 兆円に及ぶ膨大なものであ る 。
監査委員会 と し て も 、 第 3 次 長 期 計 画 の 国 家的必要性 と 所要資金の膨大性とにかんがみ、かねてから、政府出資、 市町村納付金の減免等国の財政的措置を要望してきたところである 。
昭和41年3月、運賃改訂が実施されたが、運輸収入の伸び悩み、資本諸費の増大等によって 国鉄財政は憂慮すべき状態にあり、第3次長期計画の推進に対して大きな支障を与えると考えられる。一方、国鉄は、大都市通勤難の緩和 を飛躍的に推進するため、昭和42年度において政府出資を要望している。かかる状況にかんがみ .本委員会は、国土総合開発の基盤であり、大都市のみならず地方の開発にも寄与する第3次長期計画を完遂するため、政府出資はもとより、この際、国の財政的措置の一環として、国鉄に対する市町村納付金の減免についても早急に検討されることを重ねて要望する
 

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