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仲裁と国鉄再建で議論 一鉄労の年次全国大会から一一 1981年11月号 国有鉄道から引用

 かつて日本に存在した日本国有鉄道(現在のJR各社)のイメージとしては質実剛健な車両などのイメージを持たれる若い方も多いが、ストライキばかりしていた組合があったというイメージを持つ方も多いように思います。

実際、国労・動労と呼ばれた2大組合(総評系)は、春闘以外でも政治スト(ベトナム戦争反対とか、沖縄返還反対等)を総評主導のもと実施することもあり、総評の推進エンジンのような役割を持っていました。その反面、数からすれば少数派と言え、鉄労と言う存在もありました。

鉄労は、全日本労働総同盟(同盟)に属する組織であり、国労内の新生民同右派が中心となって誕生した職能労連などが結集した全国組織であり、総評に対抗する組織として誕生、労使協調路線を主眼とした組合で、ストライキを続ける国労・動労に対しストライキをしない組合と言うイメージがあります、しかし、必ずしもスト権を行使しない(元より国鉄には、団結権はあってもスト権は無い)とは言っておらず、場合によってはストライキも辞さないと発言しています。

昭和47年の仲裁裁定の時も完全実施されなければストライキも辞さずと発言しているように、その発言は、「蜂の一刺し」のごとく差し違えるという気持ちでストライキをするのだというのが鉄労の考え方でした。

そうした意味では、生産性運動を中止して以降、国労幹部と当局のゆがんだ労使協調、いわゆる馴れ合いになって現場との乖離が行われていたのに対して、鉄労はその辺はある程度の距離を保っていたようにも見受けられます。

あくまでも私見であり、今後さらにいろいろと見ていく必要はあるのですが、少なくとも生産性運動中止以降の鉄労は、国労・動労からの組合員奪還の矢面に立つことになり冬の時代を迎えたわけで、1981年頃は、最後の再建計画と言われた、国鉄再建法が制定された時期でもあり、本当の正念場を迎えた時期の鉄労大会の記録となります。 

*******************以下本文***************************

 

同盟・全官公系の鉄道労働組合(辻本滋敬組合長、4万6000人〉の第14回年次全国大会が9月8日から10日までの3日間、静岡県熱海市内のホテノレで開かれ、向とう1年間の運動方針を決めた。
これで国鉄主要労組すべての本年度の大会は終わった。
ことしの鉄労大会は、公労委・仲裁裁定の完全実施が危ぶまれる情勢の中で、飯坂大会(昭和45年、第3回大会を指す〉で決定した「鉄労はストを"違法"とし否定するが、その前提となる公労法の精神が踏みにじられるような事態に立ち至った場合には、ストで闘う」との方針をどうするか、また、新段階を迎えている労働戦線統ーへの対応、35万人体制を柱とする国鉄再建にどの程度の積極姿勢を示すかで強い関心を呼んだ。
大会は、まず議長田に竹之内静雄(東京)、中島益雄(大分〉の両代議員を選出して始まった。最初にあいさつに立った辻本組合長は冒頭、再建問題について「昨年暮に再建法が成立し、本年5月に経営改善計画を策定したことによって国鉄再建は本格的な段階に入った。しかし55年度決算をみると、貨物が対前年比13%と大幅な落込みをみせたほか、運輸収入も予定に比べ600億円の不足を期すなど、きわめて深刻な事態だ。もし今次の再建計画が破綻した場合、現在の国鉄の経営形態は変更を迫られ、好むと好まざるとにかかわらず"民営・分割、を含む抜本的な対策が講じられるのは確実で、(国鉄職員の〉雇用の安定が脅かされるのは必至。こうした事情を十分踏まえ、新たな"再建提言、を提起し、国鉄再建に真剣に取り組んでいく」と強調する一方、国労や動労の動向についても「国鉄の置かれている厳しい現実を直視することなく、依然として観念的な運動を続け、再建や合理化に反対し再びミ違法スハ方針を決めた。とくに国労は順法闘争の復活を決めるなど、こうした態度は国鉄再建に逆行するものだ」と厳しく批判した。
このため組合長は、先の国労大会(謝11路〉で、再び武藤書記長が提唱した鉄労を含めた国鉄内主要5労組による共同テープノレや統一問題について言及し「企業の実態を直視し、まず合理化反対の路線方針を変更しない限り基本的には応じられない」と突っぱねた。そして職場規律の乱れは「きわめて遺憾」とし、現協や職場の悪慣行についても、当局が毅然たる態度で対処するよう、厳しく求めた。労使の努力こそ国鉄再建にとって、もっとも重要一一ーとの基本姿勢に立つ鉄労は、この努力を実効あるものとするため、r労使が平和条項を含むミ再建協定、を締結し、共同で再建宣言を行なうことによって、その姿勢を国民の前に示そう」との提起を行なったが、他労組の出方が注目される。
また組合長は、仲裁裁定問題について「いま行政改革との関連で、政府や自民党の一部に完全実施を否定する動きがみられるが、仲裁裁定はスト禁止の代償として設げられた第三者機関の裁定であり、これが否定されることは公労委制度の形がい化を意味するものだ」と述べた。これは、もし仲裁裁定が完全実施されない場合「これまで公労法の精神に従ってストを自粛してきた鉄労の運動方針を変更せざるを得ない」との考えを明らかにしたもので、当面、同盟νベノレでの完全実施を強く求めたり、裁判闘争の訴訟準備を進めるが、どうしても解決しない時には「最後の手段として、組織の命運をかけた断固たる闘い(飯坂大会の決定〉に踏み切る」方針を打ち出した最後に組合長は、新局面を迎えている労戦統一問題にふれ「先に発表された民間先行による基本構想は内容的には不十分だが、労働組合主義を基調にしているので支持し、全的統一へ向けて同盟・全官公の仲間と共に、民主化闘争を積極的に進める」との見解を明らかにし、組織拡大は至上命題だ、と訴えた。
運動方針では、志摩書記長が提案説明の中で、まず81賃闘にふれi(賃上げ〉要求から仲裁裁定に移るまでの過程で、これまで鉄労が要求してきた当局との合意申請が実現したのは賃闘史上初めてのこと」と高く評価する一方、国労、勤労、全施労、全勤労の4労組も同様の合意申請したことについて「様変わりをみせたのは、国労や動労の階級闘争主義に基づくミ違法スハ路線が完全に破綻したことを意味し、このととが81賃闘の最大の特徴だ」と指摘した。
また、国鉄内5労組が共同テーブノレについて話し合う問題については「同じ職場に複数の組合があるのは好ましくない」としながらも「なぜ複数の組合に分裂してきたのかを明確にすることなく、たんに数が多いから国労を中心に一つの組織(1企業l組合論〉になろうという発想は、まさに戦中の大政翼賛会で、組合員の自由と民主主義を基調とする、われわれの方針とはまったく相いれない」と決めつけ、国鉄内共同歩調の最大公約数は最低限、iイデオロギーによる組合員支配を改め、労働組合そのものを原点に引き戻すととだ」と指摘した。
そして5組合協議に参加するには「国鉄の減量経営についての現状認識を正しく行ない、その中から提起される合理化に取り組む。そのために国鉄労働者の雇用と労働条件をどのように向上させるか。非合法、合法を間わず当面、ストライキやサボタージュを行なわず、職場の厳正な規律を確立し、まず国労自体が言明しているミ働き、要求し、闘うミとの方針を実行することだ」と条件提示を行なった。
書記長は国鉄再建問題についてもi35万人体制を柱とした経営改善計画はスタートしたが、当局"."川の決意が不足気味。それは不可欠な生産性の向上にいっさいふれていないからだ。労使関係についてもミ正常かっ円滑な労使関係が必要ミとしているが、それにどう対処、ミ違法ストミにはどうするのかが明らかでない。職場規律の確立についても、重大な問題であるにもかかわらず触れられていないのはどうしてか」などと疑問点を指摘、当局回答を求めると訴えた。
このため鉄労としては「経営改善計画の不備を補い、誤りを改め、目標達成に向かつて大胆に再建に取り組んでいく」と宣言、具体的には、(再建期間中はス卜をやらない〉平和条項を含む再建協定を労使で締結。これを労使共同によるミ国鉄再建宣言ミとして国民の前に明らかにする。そして、現在、各組合と当局との間で聞いているミ労使会議ミを一本化し、(当局と全組合による〉合同労使会議(仮称〉を設置、この中で再建問題や労働条件、合理化施策について話し合ってはどうか、という提言、今後、実現を迫っていく意向である。
討論では、仲裁裁定の完全実施、国鉄再建問題、組織拡大など3点が議論の中心となった。なかでも仲裁問題が最大の焦点となった。ことにマスコミが「仲裁裁定が完全実施されなければ、無期限ス卜で闘う」との厳しい方針を打ち出した、と報じたため「裁判闘争に出た場合、法廷闘争が長びき、ストはどうなるのかJ、iストは、いつの時期に計画するのか」など、もっぱらミストミ問題に論点が移った。国労や動労のストをミ違法、と決めつけてきた関係で「職場の中で、混乱が起きたり、逆に国労・動労から共闘を申し込まれは
しまいか」といった懸念する向きもでるほど。
こうした代議員の動揺に対して本部側は、中執見解を示して、統一方針を確認した。また、総括答弁で書記長は「単一の経営体の保持こそが職場を守り抜くことであり、不満もあり苦しくても、35万人体制は絶対に仕上げ、なければならない」と訴え、新しい提言を柱に国鉄再建に大胆に取り組んでいく決意を明らかにした。

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