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昭和初年度日本国有鉄道基本計画


昭和 35 年 2 月 日本国有鉄道
第 1 計画の前提
昭和 35 年度のわが国経済は、前年度に引き続いて堅実な上昇を示すものと予想されている。したがって 、国鉄に対する輸送需要は一段と地加し 、 輸送カ増強には一層の努力が必要であると思われる。
東海道新幹線は本年度から本格的工事を始めることになったが、これは鉄道機能の長所を最高度に発揮する革命的輸送方式の実現であって、国民の期待も大きく、また国鉄の百1J 途に明るい希望を与えるものである
ので 、 その完成には総カをあげなければならな L 、。
動力の近代化をはじめとするー述の輸送近代化施策も、一応その緒につき、国民の期待にそってその効果
を発揮しはじめているので、引き統き強力にその推進をはかる必要がある。しかしながら、ひるがえって国
鉄経営の観点から長期的にこれを考鎖すれば 、 容易に楽事をゆるさないものがある。国家の公共的要訟に基
づく経 ft 負担の加重と 、 年々膨張する人件費、金利その他経営諸政の増加は国鉄財政を圧迫し、現状のまま
推移すれば将来にわたって収支の安定を欠き、予定された諸計画を遂 f-?することができないばかりでなぐ、国鉄の経営そのものも維持できなくなるおそれがある。
国鉄 5 箇年計画は第 4 年目を迎えたが、国鉄財政の怒化につれて、その進ちよくは必ずしも順調といえず経済情勢の変化、その他諸般の事情の縫移にかんがみ、再検討会要する段階にきている。したがって、将来にわたる客貨の輸送需要に適合した近代的な輸送方式を確立し、長期的な見とおしの下に安定した経営が行ないうるよう、根本的な反期経営計岡を樹立する必要がある。すべての施策はその線にそって実施されなければならない。
以上のような諸情勢のもとに、本年度は特に将来にわたっての収入増加の基盤を確定するための営業政策
の強力なる実施をはかるとともに、合理化による経費節減、輸送原価の引き下げに努力し、投資については
その対象を厳選して投資効果の充実をはからなければならない。そのためには責任管理体制を確立し、最も能率的にして企業的な業務運営がなされなければならない 。
輸送の安全はすべてに優先する基本的事項であって、特に人命にかかわる事故の絶滅には格段の労カをはらわなければならない。また特に本年度予想される輸送の繁忙期については、客貨輸送力の合理的活用を行ない、最大の効果を発揮するようにしなければならない。
以上にのべたような国鉄経営安定と輸送力鳩 'Ml のための諸施策は、広〈一般国民の理解と協力を必要とす
るので 、こ のために特別の注意と努力をはらう必要がある 。 ーー一一
第 2 基本方針
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し 新幹線工事の推進工事体制l の整備と資金の確保に努め、予定期間内に完成するよう工事の進ちょくをはかるの
2. 長期計画の樹立 長期的視野のもとに総合した経営計画を樹立し、財政基盤の確立をはかる。
3. 責任管理体制の確立 トップ ・ マネージメソトの強化と本社事務の簡素化、支社背景j の強化により 、
企業性に徹した能率的業務運 営をはかる。
4. 技術研究の推進新幹線をはじめとする鉄道の近代化、合理化の基盤として、技術研究を推進する
5. 営業政策の強化
( l) 収入の確保 将来にわたって収入の増加と安定をはかるため、長中距離旅客の誘発と高等級
貨物の他への転移の防止につとめる。このために急行 ・ 準急行列車の増発、貨物計画輸送等の施策を
推進する。
(2) 客貨輸送の近代化と合理化 ローカル旅客列車の使命別盤理 、小 荷物輸送の再検討、貨物駅
集約、コ γ テナー、パレット方式 、 荷役機械化 、 包装際準化等の近代化、合理 化施 策を推進する。
(3) 波動輸送対策週末波動 、 季節波動 、 年末波動等において、週末、季節ダイヤ等により 、 客
貨の繁闘に応じ適切な輸送力の配分を行なう。
(4 ] 営業活動体制!の磁立 市場調査の体制j を整備するととも巳輸送統計の内容 ρ 再検討を行なう
なお 、 関係運輸機羽等との述聖書を強化し~顧客に直結する営業面の体制をととのえ 、一 貫した輸送サ
ーピエの改善をはかる。
6. 輸送力の増強と繁忙期緊急対策
[ 1 ) 輸送力地強 輸送力憎強は主要幹線について重点的に行なう。通勤輸送について特に混雑す
る区聞は時差通勤について協力会もとめる。
(2) 繁忙期緊急対策 貨車埼備 、 廃車時期の調整 、 ピーク時にそなえた速効的工事の推進等によ
り繁忙期における輸送力を最高度に発揮できるようにする。
7. 動力の近代化 沼化及びデイ{ゼノレ化等の動力の近代化をさらに推進するとともに、それに関連し
て、輸送方式、検修方式その他の近代化、合理化をすすめる。
8. 合理化の徹底 経費の節減、要員の生み出しのため 合 理化を徹底し 、能率の 向上をはかる。特に次
の項目については 、 その実施を推進する。なお、要員の運用については、配置転換の 円 滑な促進をはかる
こととし、減耗補充は最小限にとどめる。 /
(I) 車両及び施設の保守方式の合至宝化 (4) 資材管理の合理化
(2) 事務の機械化 (5) 財産の実態調査と不用財産の処分 。
(3) 駅区等における管理並びに作業の合理化 (6) 業務の部外委託
9. 投資管理の強化
Cl)..投資は長期のみとおしの下に厳選して重点的に行なレ 、 投資効果が十分に期待できるように
する 。
(2) 輸送力増強及び近代化に必要な基本的投資以外は、経営的に有利な人件費、修繕費等の節減
に効果のあるものを対象とする 。
(3) 取替は実状に即して行な L 、 、資産の活用を考える 。 なお、客車の気動車への改造を試行する
10. 線区別経営改善と非採算総区経営の検討 線区別経営改善を推進するとともに 、 非採算線区につ L 、
ては、その線区に適した管理 、 輸送 、 運転 、 保守方式を採用し 、 線区によっては自動車代行あるいは一部
の営業の廃止を行なう。
II 自動車 、 船舶 一一一誌面の都合で省略一一
12. 保 安 人命の損似防止に fil 点をおき 、 特に関係職員の指導の徹底をはかる。なお、踏切事故は漸
増の傾向にあるので、その防止対策を強力に推進する。
第 3 経営目標 (追って通達する)
第 4 実施要領
1. 本社内各長自主、この計画に蕊づき特に本社として重点的Jこ実施すべき事項につき、その突施計画を
定め、これを推進し 、 その 実 絞 につ い て 理事会に 報告する 。
2. 支社長は 、 この計画に恭づき、地方的特性を考慮して支社の具体的基本計画を作成し、これを本社
に報告するとともに、所管の機関を指導してその実施にあたる。その突施状況については、支社長会議に
おい て報告 する。 


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