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昭和21年10月記事から  国鉄問題をかく見る 全文

 以下は、国鉄誕生前の人員整理と組合運動 前編 の関連記事として、国鉄部内誌【当時は運輸省】の「交通」という雑誌の、昭和21年10月号の記事を転載したものです。

当時の国鉄を取り巻く環境等が語られていますが、組合視点ではないと言う点で非常に重要ではないでしょうか。

当時の国鉄は、ハイパーインフレに伴う運賃改訂を行うも、財政法の絡みで、十分な値上げを実施できず、更には、復員に伴う失業者対策としての受入といった問題もあり、当時の国鉄の運営では50万人程度であったと言われる定員に対して、60万と過剰となっており、その為に、人員整理を行うという理由で、戦時中に採用した女性職員の退職勧奨が行われるものの、前述のとおり、失業者対策で男性職員の受入を行うなどで、有能な女性社員が退職、若しくは下位職(雑用)に甘んじる事となりました。さらには、経費削減の目的で行おうとした人員整理は、組合の反発も大きく、最終的には当局側の譲歩という形で決着が図られることとなり、その結果がその後のゼネラルトライキ、スト権剥奪などに繋がるのであり、その経緯を記録した非常に資料制の高い記事です。

後段では、当時の世論などの記事を抜粋した部分があり、資料性が高いと判断しましたので、併せて末尾に記載させていただきました。
当時の鉄道史の基礎資料としてご覧いただければ幸いです。 

 

昭和21年当時のヤミ市の混乱する町のイメージ(AIによる作画)

当時の資料性を確保するため、旧字体は新字体に改めたほかは、言い回しなどは当時のままである点をご了承願いたい。 

国鉄問題をかく見る

井上縫三郎 


四面楚歌の国鉄

国鉄の人員整理問題は、国鉄総連合側のゼネスト予告、交渉一時打切りで、嵐となるか、それとも曇後晴で、台風一過に終るか、いま重大な危機に臨んでいる。恐らく、この小論が讀者諸君のお目にとどまるころには、どちらかの局面に達しているだらう。従つて時候おくれのものとなる懸念が多いが、さういふことを顧慮せす、国鉄問題に關する忌憚のない、わたしの意見をのべて、大方の御叱正を請ひたいと思ふ。

率直にいつて国鉄は、国民から愛される国鉄になつていない。サービスは悪くなつた。それと反比例するかのやうに、運賃はあがるばかりである。省電など通勤者で雜咨する朝夕について、ラッシュ・アワーといふ言葉があつたが、いまは26時中殺人的な混雜である。それだけではない。列車事故の頻発は、依然とし衰へを見せない混雜と相俟つて、汽車旅行を全く生命がけにしてしまつている。これでは国鉄は義理にも愛されない。

もっとも国鉄人にして見れば、戦争中は陸運転移とか何とかいつて、戦局の悪化に伴ふ海運輸送の行詰りで、鉄道の輪送責任はますます重加したのである。莫大な戦災の被害と、長期にわたる補修力の低下は、著しく国鉄の輸送力を低下させている。
極言すれば半身不隨である。21年度の予算が、改主建従といふか、新規工事を見合せて、資金と資材を復興に集中する方針をとつたのは当然である。さてこのことたるや物価騰貴、資材難、生産力低下で容易でなく、それどころか石炭飢饉は列車運転さへ極度に窮屈化しているのである。

さうして何といつても苦しいのはその台所だ。今年度の赤字が32億円、平年度は44億。この赤宇を全部運賃値上げで埋めるなら、貨物を5倍、旅客を5割ぐらい上げねばならない。過般鉄道会議は貨物3倍、旅客2割5分の値上げを答申したが、これでも相当難航の末であつて、興論は決して鉄道に味方していないのである。結局運賃値上げ後の今年の赤字13億は、借入金と経営合理化で、何とか帳尻を合せるほかないといふのが管理者側の肚である。そこで経営合理化の有力な手段として、6月末の現在員550,000を基礎に一般減耗の2萬5千と軍復歸、外地鉄道採用,技能労務要養成職員採用86,000を加減した年度末の見込數61
万は、結局定員から12万9千だけはみだすので、差当り75,000人を整理するとの方針を樹てたが、これが総連側の反撃を喰つて、雨か嵐かといふのが、国鉄四面楚歌の大筋ではあるまいか。

双方のいひ分と態度

組合側では8月26、27の両日拡大闘争委員会を開いた結果、交渉継続續について当局に誠意なしとし、一時交渉を打切ることになつたが、ことここに至るまでの経過と双方のいひ分、並びにそのとつて來た態度を顧ると、局外者たるわれわれ一から見れば、隨分不滿を感ずるところがある。またそれだけに、双方が大局的見地に立ち誠意をもつて臨むならば決して最惡の事態に陷ることなく、解決できることを思はせるのである。
 そもそも今度の整理問題のきつかけは、7月24日管理者側が総連本部を訪れ、人員整理を申入れたことに端を発してみる。この申入れについては、一方的通告でなく、経営協議会に代るべき方法として、組合側と協議を行ふと当局はいうたが、では一体それまでどう取扱はれて來たか。国鉄があらゆる面から危機にさらされてみたことは、何もこの期に及んでのことではない。終戦後の諸情勢、インフレ、物価騰貴。組合結成、予算編成難。これらを考えるなら、如何にして経営を合理化するかは、当局最大の關心事でなければならぬはずである。恐らく今回整理入員75000名を発表するまでには、相当綿密なる検討がなされたと信する。論理的には、本年度の予算編成当時,この問題は当然考慮されてしかるべき性質のものである。この推論にして誤りなしとすれば、一体当局はなぜ、それまでに組合側と胸襟を開いて、双方協議の上合理的解決処理の方法をとれなかつたかである。国鉄総連合が結成されてすでに半年、未だに労働協約も、経営協議会もできてわないなど、いづれに原因があるにしても、余りにスローモーではないか。とにかく管理者側の「整理問題のとりあげ方は余りに姑息であり、この難局を突破する当局として度胸もない、時代的感覺も薄いといはざるをえない。
 ところで組合側は8月3日、大臣に対して大量誠首取消の申入れを行った。これはたとへ24日の申入れが一方的通告でないにしても、組合側として整理を前提とした協議には応じ難いといふのは当然である。その後当局からの数次に亘つての協議申入れに組合が応ぜず、白紙還元による協議を主張、16日馘首を前提とせずその條件で交渉することとなつたのは当然のことだ。かくて組合側が條件とした25日を若干超過して、漸く3項目の結論を得、これにより26日始業から開始を予定した組合側の経営管理は、9月1日までその指令を出さぬこととなつたが、26,27日の拡大闘争委員会は当局にに誠意なしとして、交渉を打切つて物別れの形にあるのが現状である。

再建のための互譲協力を

わたしは以上の経過のうち、重大な組合側の決定をおとしてるのである。
それはいふまでもなく、16日組合側から当局に通告して來た。
14、15両日の拡大中央委員会の決定に基く増員対策と、これが容られぬ場合の26日からの経営管理開始9月15日を期してのゼネスト予告である。ゼネストが最後の手段であることはいふまでもない。そこでこの最後手段をとることの決定は、最も慎重になされるべきである。しかるにに大鉄、門鉄、四鉄などの自重説が、青年、婦人代表や東鉄、札鉄等の闘争開始説に押切られて、この決定を見た。このことは事柄が重大なだけにいささか不安を抱かせたが、果してその後名鉄以西がこれに同調せず、西日本は別個の行動をとらんとするかの形勢にある。これは当局に対する組合の威力を示す上から、また決定的段階にたつ国鉄総連と組合員に決してい~影響を與へない。ゼネスト決定が当局牽制のかけ聲だけのデモなら別だが、最惡の場合文字通り決行する決意ならば、国鉄5十萬の賛成支持は勿前、それ以外に国民大衆の理解と同情をうることなくして成功は至難であるから、十分外部に対してその支持をうるだけの努力を惜しむべきでない。この點、わたしは真偽は別として「国鉄爭議に共産党の指令飛ぶ、今春すでに闘争プリント」といつたことが、一部に報道されてみる時だけに、組合側は決して焦ることなく一面交渉、一面闘争の態勢で、諸條件を整備しつつ、目的貫徹に邁進すべきでなかつたか。
  かく組合側に苦言を呈するととるに、管理者側に対しても進言したい。交渉開始の申入に対して、組合側が白紙還元を條件としたのに、どうして快諾できなかつたかである。国鉄の経営合理化は好むと好まざるとにかかはらず、それ以外に途ないこと自明の理である。事業費中の物件費の値上りが戦前に比し石炭11倍、レール19倍に比較すれば、人件費はたとへ40%24億を突破してねるとはいへ、一人当り月527円というのは、現在の物価事情からすれば、まさに餓死的賃金であり当然改善されるべきである。しかし他面如何に諸条件があっかしていても、輪送量、列車キロ、営業キロ等から見て、大体昭和17年ごろの状況にあり、要員400,000人前後と見るべきものが、このままの膨大な剩員を擁していることは、何としても許されない。キロ当りの人員昭和12年1日4.3人だつたものが、毎年漸増して20年には26人、21年には28.2人と飛躍してることは、1日8時間制をとつても、これに対す整理されぬ限り、合理的経営は不可能である。しかし当局の整理対象はその後若干改められたが、国鉄の年齢構成を見ると、20歳以下が実に48・2%を占めてみる。もつて年少従業員が、如何に大きな役割を果して来たか明瞭である。これを整理となれば、第一に対象とするのは、余りに無慈悲であり、殘酷ではないか。か。それよりも国鉄整理が失業問題の前途に及ぼす影響を考へ、まづもつて合理化の半面、如何にしてかかる剰員を、多角経営によつて失業せしめず、逆に国鉄の再建、日本経済再建に役立たしめるかについて、これこそ白紙に還つて真劍に討議する態度が要望されてならないのである。
結論を急ぐが、管理者側も総連側も、同じ国鉄のめしを食つて來た人間であり、搾取非搾取の關係に立つものでないのだから、両者は国鉄問題の重要性と現下の国情に照らし、あくまで互讓協力によつて、圓滿解決を期待し、かつ努力すべきだ。過去を論じても致し方ない。それよりも、」いろんな悪感情はさらりとすてて、虚心坦懐に議論は議論で、あくまで合理的に解決點を求めたがよい°それに先立つものとして、敗戦祖国に対する愛情と同じ国鉄人としての相互の厚き信賴と友愛の精神の確立を望んでやまない。

世論


★整理問題是否
読売投書(8月27日)

戦前水準への復興さらに文化国家にふそはしき鉄道への躍進に想ひをいたすとき運転、工機、保線および通信等の現業部門にはなほ人員の不足さへも感ぜられる。
 しかしながら他面依然として官業的冗員配置、常習的怠業者およびサービス不理解者とみなさるべき者の多きことは衆日の一致するところである。
 経済的な理由が運賃の殺人的増額から誠首まで発展した以上、あらゆる無料乗車券の発行及通用の即時停止、ついで人員の適正配置による車輛、路線の確保、列車、電車の運行回数の増加によつて増収を図るべきではないか。
 かくしてのち国民の負担軽減の正当な労働と報酬の關係において前述の冗員を整理すべきではあるまいか。真の国民の国鉄としてサービス第一主義への復興が問題を解決することとなる。
 いっに変らぬ当局の官僚的独善による科学的考察の不足および労組の黒白混合の闘争方式の矛盾に一考を期待するものである。

朝日投書(9月1日)
駅などでふざけている男女駅員を見ては従業員を整理する必要を痛感させられる。然し一方に於て失業対策に頭を惱ましている政府が7万余の失業者を新に送り出さうとするのは何と解釈してよいか分らぬ。何一つの失業対策のなされてるない現在、7万余の失業者が政府によつて出されてよいだろうか。失業対策を一日も早く立てて彼らを救済する道を考へ、しかるのちに人員の整理をしたらどうだろうか。徒に予算の、赤字のといって失業者の数を増すのは妥当な政治といえるだろうか。

朝日社説(8月31日)
総連が交渉打切りを通告したのは根本において、鉄道当局が馘首を前提とした歩み寄りしか示さないからのやうである。総連のいはゆる「当局の誠意たきもの」とする論議はどこまでも前提としていることを指してみるとみられる。
 われわれは鉄道当局がこの際、思ひ切つて誠首を前提とした主張を撤回すべきことを勧告するものである。そして鉄道の再建復興案を、当局側と総連と、全く対等の立場にたつて、改めて練り直すことを提案する。すなはち、誠首、反馘首を論點とせず、鉄道復興を中心の議題とした協議会が新にスタートを切らるべきである。

毎日社説(8月29日)
日本の経済再建については、国鉄は実に重大な任務を帯びているのである。国鉄は全力を舉げて国鉄自体の復興に努めなければならないし、国鉄当局と全従業員との最も緊密な協力の下に、国鉄の能力を極限まで発揮することを要請されている。
 国鉄当局の人員整理案と国鉄復興計画とは、以上の要請に合致するかどうか。従業員側の増員増収の要求は、以上の国家的、国民的要望に合致するかどうか。国家と国民大衆の鉄道を、従業員側の一方的意見によって、経営管理することが、どん底から起ちあがらうとする日本再建のプログラムと、完全に合致するかどうか。これらの点については、もつと真摯で、しかも冷静周密な檢討が加へられなければならぬ。

 ★労組の宣伝方法 

朝日投書(9月1日)
国鉄労組が近く予定されている従業員誠首に猛烈な反対の宣伝を始めた。最近その一つとして、省電、客車の車体横腹に「誠首反対」について色々なことを大書、特筆する方法がとられている。ここにわれわれが問題にせんとすることは、車体にデカデカと書かれた宣伝文字が、いかにも省電を利用するわれわれ都民の眼にとつて決して凉々しい感じを與へないといふことである。車体を私有物視しているから、かかる愚劣な宣伝方法をとつたのではないかと解釈されてもやむを得まい。



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